徴税吏員の逡巡

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児童手当と執行停止の関係?

自民党高市政調会長が、児童手当の所得制限について「世帯合算」に変更すべきだとの考えを示した、との記事です。

「世帯合算」に変更を 児童手当で自民・高市氏:時事ドットコム

そもそも児童手当は、

・・・児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資すること

を目的としています(児童手当法第1条)。児童手当制度が創設された昭和47年というと第二次ベビーブームの真っ最中ですから、少子化対策というよりは経済支援に主眼をおいていたことが読み取れます。また、当時の時代背景を考えれば、圧倒的に専業主婦家庭の割合が高く、世帯の収入の大部分は世帯主である男性が稼いでいた、と見るのが自然でしょう。世帯主の収入を基礎として所得制限を設けたのは、このあたりに根拠があるように思われます。

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現在の状況を見れば、専業主婦世帯と共働き世帯の数は、制度創設当時から見てきれいに逆転しています。今回の10万円給付に関しては給付開始時期を重視したとのことですが、制度の変更に向けた議論は加速しそうですね。

 

さて、吏員として「世帯収入」と聞くと、地方税法第15条の7第1項第2号を思い出しますよね。いわゆる2号停止です。

地方団体の長は、滞納者につき次の各号のいずれかに該当する事実があると認めるときは、滞納処分の執行を停止することができる。

一 滞納処分をすることができる財産がないとき。
二 滞納処分をすることによつてその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。
三 その所在及び滞納処分をすることができる財産がともに不明であるとき。

この「生活を著しく窮迫させるおそれ」については、国税徴収法基本通達第153条関係3によります。

法第153条第1項第2号の「生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」とは、滞納者(個人に限る。)の財産につき滞納処分の執行又は徴収の共助の要請による徴収(以下「滞納処分の執行等」という。)をすることにより、滞納者が生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態(法第76条第1項第4号に規定する金額で営まれる生活の程度)になるおそれのある場合をいう。

ここで、「法第76条第1項第4号に規定する金額で営まれる生活の程度」について、世帯収入で判断するのか、滞納者個人の収入で判断するのか、という質問を受けることがあります。

明文の規定はない(と思う)のですが、生活保護は世帯単位で要否を判定されますから、「生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度」が要件である以上、世帯収入で判断する他ないと考えられます。

生活保護法第10条

保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。

 

これを読んでいる良い子のみんな。

滞納者の言う「児童手当が出たら払います」は、決して信じちゃいけないぞ。

おじさんとの約束だ。