徴税吏員の逡巡

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【滞納整理の現場から】その3 法人に対する送達

今回検討したケースの概略は以下のとおりです。

滞納法人Aは登記上の所在地に営業実態がないため、これまでは代表者Bの住所地に書類を送達していたが、先ごろBが死亡した。
Bには相続人がないが、Aの法人登記簿にはBが代表取締役として登記されているほか、取締役としてCの記載がある。
Aに対する賦課徴収関係書類を、Cに送付してよいか。

国税通則法の基本通達には、以下のとおり明示されています。

国税通則法基本通達第12条関係2
法人が事実上解散し、または清算を結了し、その所在が不明であるとき(たとえば、登記簿上の法人の所在地に事務所がないとき。)は、その法人を代表する権限を有する者の住所等に書類を送達するものとする。

事例では代表取締役が死亡したということですが、この事実を、「法人を代表すべき権限を有する者を欠いている状態」と判断するのか、又は「代表取締役以外の取締役が代表権限を有している」と判断するのかが問題となります。この点について、名古屋地判昭和36年11月29日は以下のとおり判示しています。

右の如く民法第五三条と私立学校法第三七条とは理事の代表権並びに代表権の制限について同趣旨の規定をしているものと認められるが、学校法人の代表権に加えた制限は必要的登記事項としてこれを公示すべきことを義務付け、その登記あれば善意悪意を問わずすべての第三者に対抗し得る効力を有するところからみれば、学校法人における制限代表者の地位は民法のそれと性質を異にし、対外的に学校法人を代表する機関に固定されたものというべきであるから、かかる代表者が死亡その他の事由により欠員となつたときは他の理事において当然に代表権限を有するに至るものとは解されない。
即ち、かかる場合は法人を代表する権限を有する者を欠くに至つたものと解するを相当とする。

会社法においても、代表取締役を定めた場合、(いわゆるヒラの)取締役には代表権はないものとされていますし、

会社法第349条第1項
取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する
者を定めた場合は、この限りでない。

代表取締役の住所氏名は登記事項とされていますから(会社911 ③(14))、上記の学校法人に係る判示に鑑みれば、「法人を代表する権限を有する者と欠く」状態であると解されます。したがって、代表権のないヒラ取締役(事例ではC)に対する送達は適切ではありません。

では公示送達はどうでしょうか。

地方税法第20条の2第1項
地方団体の長は、前条の規定により送達すべき書類について、その送達を受けるべき者の住所、居所、事務所及び事業所が明らかでない場合又は外国においてすべき送達につき困難な事情があると認められる場合には、その送達に代えて公示送達をすることができる。

文理上、代表者が存在することは明らかであるものの住所及び居所が不明である場合であれば公示送達の要件に該当するものと考えられますが、事例のように代表権を有する者を「欠いている」場合については、公示送達は適切とは言えないでしょう。

結論として、本件については、一時代表取締役の選任申立てにより 、書類の受領権限を定める
必要があるとの結論に至りました。

会社法第351条
代表取締役が欠けた場合又は定款で定めた代表取締役の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した代表取締役は、新たに選定された代表取締役(次項の 一時代表取締役の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお代表取締役としての権利義務を有する。

2 前項に規定する場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時代表取締役の職務を行うべき者を選任することができる。