徴税吏員の逡巡

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【滞納整理の現場から】その2 滞納処分と相続②

第1回は、差押え後に滞納者が死亡したケースを取り上げましたが 、滞納者が死亡後に差し押さえる場合はどうなるでしょう。

国税徴収法第139条第2項
滞納者の死亡後その国税につき滞納者の名義の財産に対してした差押えは、当該国税につきその財産を有する相続人に対してされたものとみなす。ただし、徴収職員がその死亡を知つていたときは、この限りでない。

「滞納者名義の財産」については、国税徴収法基本通達は以下のとおり規定していますが、

国税徴収法基本通達第139条関係5

法第139条第2項本文の「滞納者の名義の財産」とは、差押えに当たり、徴収職員が財産の帰属を名義によって判断する財産・・・に限られず、社会通念上滞納者の名義の財産と認められるものをいう。

実務上は、登記登録を第三者対抗要件とする財産(主として不動産と登録自動車ですかね)が大多数を占めると思われます。「徴税吏員が死亡の事実を知らなかったとき」に限って、死亡した滞納者名義の財産に対する差押えが認められる、という趣旨ですね。

滞納者の死亡を徴税吏員が把握していれば、当然相続人に対して滞納処分を行うこととなりますが、相続放棄の可能性もありますので、実務上は承継通知の発送から3ヶ月程度は様子を見ることが多いと思われます。

民法第915条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

※3ヶ月以上経過しても相続放棄が認められるケースもあるので、 注意が必要です。

最判昭和59年4月27日
熟慮期間は、原則として、相続人が前記の各事実を知つた時から起算すべきものであるが、相続人が、右各事実を知つた場合であつても、右各事実を知つた時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、・・・相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、・・・熟慮期間は 相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。

今回検討したケースの概略は以下のとおりです。

不動産差押え中の滞納者(A)が死亡し、相続人は子2名(B・C )。
当該不動産は従前から第三者に賃貸しており、その賃料はBが一括して受け取っている。現段階で相続登記は行われていない。
当該不動産に係る固定資産税については、Aの死亡後、Bに対してのみ告知しており、Bから納付の申し出はあるものの、納付実績はない。賃料の差押えを検討しているが、差押えの相手方はBとなるのか、それとも賃料を受領していないCも含むべきか。

まずは賃貸借契約の内容を確認することが先決ですが、聴取したと ころ、先代からの貸し借りであり、特に契約書等も作成していない、とのこと。滞納者に聞いても知らんの一点張りで、遺産分割についての意向も明らかにしない、という状況でした。

この場合問題となるのは、賃料債権の性質です。
この点につき、最判平成17年9月8日は以下のとおり判示してい ます。

遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間 、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきで あって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。
遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるもので あるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した 上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。

これを本件に当てはめて考えれば、遺産分割協議が成立していない 以上、本件賃料はB及びCがそれぞれ2分の1ずつ取得しているものと解されます。 納税通知書はBに対してしか送付していませんから、Cに対する課税の告知は成立しておらず、このままでは賃料の2分の1については差し押さえることができません。したがって、本件についてはCに対する告知・督促から、という結論になりました。