徴税吏員の逡巡

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差押えによる取立てと自主納付

差し押さえた債権の取立てと前後して、今まで音沙汰のなかった滞納者が急に自主納付する、ということがあります。「なんで今さら」と思わなくもないのですが、まあ、自主納付が原則ですからね。はい。

国税徴収法に基づく滞納処分は、(対象財産が債権の場合は)「差押え」「取立て」「配当」の各処分から成ります。滞納者による自主納付(完納)が取立て前にされたのであれば、差押えを解除することになります。

国税徴収法第79条第1項

徴収職員は、次の各号のいずれかに該当するときは、差押えを解除しなければならない。

 一 納付、充当、更正の取消その他の理由により差押えに係る国税の全額が消滅したとき。

また、債権に関しては取立ての時点で納付とみなされますので(徴67③)、

国税徴収法第67条第3項

徴収職員が第一項の規定により金銭を取り立てたときは、その限度において、滞納者から差押に係る国税を徴収したものとみなす。

取立て後に自主納付がされた場合、当該自主納付は誤納として扱われるものと解されます。よって、地方税法第17条の規定により、遅滞なく還付する必要があります。

地方税法第17条

地方団体の長は、過誤納に係る地方団体の徴収金(以下本章において「過誤納金」という。)があるときは、政令で定めるところにより、遅滞なく還付しなければならない。

問題になるのは、「自主納付により完納となっていたものの、処理が間に合わずに取り立ててしまった」場合でしょう。

完納(租税債権の消滅)は差押えの解除要件ですが(徴79①)、差押えの解除は滞納者(若しくは第三債務者)に通知することによって行うとされています(徴80①)。

国税徴収法第80条第1項

差押の解除は、その旨を滞納者に通知することによつて行う。ただし、債権及び第三債務者等のある無体財産権等の差押の解除は、その旨を第三債務者等に通知することによつて行う。

(相手方がある場合の)行政処分の効力発生時期については、最判昭和29年8月24日は以下のとおり判示しています。

・・・行政庁の処分 については、特別の規定のない限り、意思表示の一般的法理に従い、その意思表示が相手方に到達した時と解するのが相当である。即ち、辞令書の交付その他公の通知によって、相手方が現実にこれを了知し、または相手方の了知し得べき状態におかれた時と解すべきである。

当然、解除事由の発生から解除の効力発生までタイムラグが生じることとなりますが、債権の取立権は、「差し押さえた債権」についてのみ成立しますから(徴67①)、解除の効力発生後に行われた取立ては、その前提を欠く無効なものと考えられます。したがってこの場合は、当該金銭を第三債務者に返却すべきものと考えます。

取立てが解除の効力発生前であれば、取立て自体は有効と解されますが、配当計算書作成時において確認できる租税債権の額は0になっていますから、一旦取り立てて歳計外現金として受け入れ、全額を滞納者に配当することになるでしょう。