徴税吏員の逡巡

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相続人の代表者と納付責任

「相続人の代表者」というのも、名前が良くないと思うんですがねえ・・・。

地方税法第9条の2第1項

納税者又は特別徴収義務者・・・につき相続があつた場合において 、その相続人が二人以上あるときは、これらの相続人は、そのうちから被相続人の地方団体の徴収金の賦課徴収(滞納処分を除く。)及び還付に関する書類を受領する代表者を指定することができる。

同条の見出しは(相続人からの徴収手続)とされていますが、地方税法総則逐条解説にも記載されているとおり、その実体は相続人に対する書類の送達の特例について規定しているものです。

この特例の対象となる「賦課徴収(滞納処分を除く)及び還付に関する書類」とは、「納税の告知に関する書類、更正又は決定に関する書類、督促状その他地方税法等の規定により通知すべき書類及び過誤納金の還付又は充当に関する書類等」とされています(上記逐条解説)。

これらの書類が相続人の代表者に送達された場合には、その書類に係る処分は、その指定に係る全ての相続人に対して効力を生じることとされています。したがって、単純な承継の事例であれば、督促までは代表者に送達することで足りるものと考えられます。

なお、同条による「指定」については、指定する相続人と指定される相続人(=代表者)との間の合意を前提とするものであり、単に「書類を受領する」行為は法律行為ではありませんから、代表者とその他の相続人の関係は、準委任(民656)に該当するものと解されます。準委任には民法第10節の規定が適用されますので、代表者は、受け取った書類等を他の相続人(委任者)に引き渡す義務を負います(民646)。したがって、(法の規定から考えれば)各相続人は実際に書類を受け取っている「はず」です。

民法第646条第1項
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の 物を委任者に引き渡さなければならない。
その収取した果実についても、同様とする。

民法第656条
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

納税義務の承継事案であれば、各相続人は民法の規定による相続分に基づいて按分した額についてのみ、納付義務を負うこととなります。
ただし、相続人のうち、相続によって承継税額を超える積極財産を取得していた者については、地方税法第9条第3項の規定により、その超える額を限度として他の相続人の承継税額についても納付責任を負うこととされていますから、積極財産の相続が明らかであれば、他の相続人の承継分についても納付責任を追及できる可能性はあります。

地方税法第9条第3項

前項の場合において、相続人のうちに相続によつて得た財産の価額が同項の規定により納付し、又は納入すべき地方団体の徴収金の額をこえている者があるときは、その相続人は、そのこえる価額を限度として、他の相続人が同項の規定により納付し、又は納入すべき地方団体の徴収金を納付し、又は納入する責に任ずる。