徴税吏員の逡巡

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催告による時効の完成猶予

地方税の徴収権は、5年間行使しないときは、時効により消滅します。

地方税法第18条
地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利は、法定納期限の翌日から起算して五年間行使しないことによって、時効により消滅する。

この徴収権の時効に係る障害事由については、地方税法第18条の2に規定(告知、督促及び交付要求)があるほか、同法第18条第3項の規定により、民法の規定が準用されます。

令和2年4月1日施行の改正民法により、時効の完成が妨げられるという(改正前の『時効の停止』と同様の)効力を時効の「完成猶予」、新たな時効が進行を始めるという(改正前の『時効の中断』と同等の)効力を時効の「更新」という表現を用いて再構成されましたが、経験豊富な吏員諸氏ほど、戸惑いが抜けないのではないかと拝察します。

この時効障害事由のうち、催告については、改正前後においてやや規定ぶりが異なっています。

改正前民法第153条

催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

改正民法第150条

1 催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は 、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

改正前においては、催告から6箇月以内に差押え等の処分をしなければ、時効の中断の効力を生じないとされていましたから、文理上は催告自体に時効中断効があるようにも読めます。しかしながら、改正前においても、時効を中断するためには一定期間内に裁判上の請求や差押え等の手続きを別途行う必要であり、催告には一時的に時効の完成を阻止する効力しかないことを意味しており、改正前後で趣旨は変わっていないものと解されます。

また、改正民法第150条第2項は新設された条文ですが、改正前においても判例法理により、催告で延長した時効期間をさらに次の催告で延長する、ということは認められていませんでしたので(大判大正8年6月30日)、この取扱いについても変更はありません。

なお、完成猶予の効力を生ずるためには、催告文書が相手方に到達することが必要であると解され、東京地判平成10年12月25日も以下のとおり判示しています。

そして、催告は、債務者に対して履行を請求する債権者の意思の通知であるから、これが債務者に到達して初めてその効力を生ずるというべきである。