徴税吏員の逡巡

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捜索はお留守のときに…?

札幌市市税事務所の職員が、税金を滞納した男性の留守中に自宅を捜索した際、玄関ドアに男性の名前や捜索に入った事実を書いた書類を張り付けてきたようです。

https://news.yahoo.co.jp/artic%20les/0b0594ba48bdafeaba37f92f6d%20819049175f58bc

鍵を壊して内部を捜索後、鍵を交換し、玄関ドアに滞納者の名前、 捜索を行った事実及び市税事務所に連絡するよう書いた文書を「第三者に見える状態で」 貼り付けた、とのことで、市税事務所側は不適切な対応として謝罪したとのこと。

担当した職員は「鍵を壊して捜索したことに男性が戸惑わないよう 配慮して文書を張り付けた」と説明しているということです。

とのことですが、確かに留守中に鍵を壊され、金目のものが消えている、ということになれば、滞納者から見たら、泥棒に入られたのと変わりありませんからね。 「戸惑わないよう配慮して」という気持ちは分からないこともありませんが、個人的な経験を言えば、留守宅の捜索というのは極力避けるようにします(そのために張り込みをして在宅時間を確認したりもします)。

滞納処分のための捜索については、憲法第35条(住居の不可侵) との関係が問題になりますが、

何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収 を受けることのない権利は、現行犯逮捕の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

この点についてよく引用されるのが最判昭和47年11月22日、いわゆる川崎民商事件です。

https://www.courts.go.jp/app/f%20iles/hanrei_jp/962/050962_hanr%20ei.pdf

従来の解釈としては
憲法第35条の規定は、条文の位置から見て刑事手続にのみ適用される
②滞納処分による捜索は、(刑事責任を追及するものではないので )要件を厳格にする必要がない
などを理由として憲法第35条の適用はないと解されてきましたが 、本件判決において

憲法35条1項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保 障した趣旨であるが、当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断 することは相当ではない。

と判示されました(ただし、諸々の点を考慮して『あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといつて、これを憲法35条の法意に反するものとすることはできず』とも判示していますから、違憲の判断が示されたわけではありません) 。

また、留守宅の捜索において鍵を壊すことの是非ですが、徴基通142条関係7には

徴収職員は、滞納者又は3に規定する者の物又は住居等の捜索に当たり、閉鎖してある戸、扉、金庫等を開かせなければ捜索の目的を達することができない場合には、その滞納者又は3に規定する者に開かせ、又は自ら開くことができる( 法第142条第3項)。
ただし、徴収職員が自ら開くのは、滞納者又は3に規定する者が徴収職員の開扉の求めに応じないとき、不在のとき等やむを得ないときに限るものとする。

と規定されており、「不在」も「やむを得ないとき」に含まれていますから、一見問題ないようにも思われますが、捜索にあたっては、原則として滞納者又は親族等を立ち会わせなければならないと規定されています(徴144)から、
留守宅の捜索というのは極力避けるというのが法の予定するところではないでしょうか。
なお、上記の徴基通142条関係7の逐条解説においても、以下のとおり記述がありますが、

・・・しかし、まずは滞納者又は第三者にこれを開かせ、これらの 者が徴収職員の求めにもかかわらず開かない場合に限り、
徴収職員が自ら開くものとし、これに伴う必要な処分は滞納者又は 第三者に不必要な損害を与えることのないように必要最小限度にとどめるべきである。

敢えて「不在」のケースを除外しているようにも読めます。