徴税吏員の逡巡

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そこは「送達」じゃない?

5人の脱北者が、北朝鮮政府を相手取り提起した損賠賠償請求訴訟が話題になっています。

北朝鮮相手取り「帰国事業」で損賠訴訟=10月、日本で「初弁論」(WoW!Korea) - Yahoo!ニュース

韓国メディア「聯合ニュース」は「共同通信」などを引用し、この訴訟を受け持つ東京地裁が第1回口頭弁論を来る10月14日に開催することを決定したと報道。 北朝鮮とは外交関係がないため、裁判所の掲示板に一定期間、関係書類を公示することで相手に届いたとみなす「公示送達」の手続きを取ったと伝えられている。

民事訴訟法上、「外国においてすべき送達は、裁判長がその国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してする」と規定されています(民訴108)。

他方、送達は裁判権(公権力)の行使に当たりますから、相手国の同意を得ずに送達を行うことは主権の侵害に該当するおそれがあります。そこで、多国間条約である「民事訴訟手続に関する条約」あるいは「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約」を締結して、上記の規定に実効性を持たせています。

逆に言えば、北朝鮮を含めて、条約を締結していない国家については「嘱託による送達」ができませんから、公示送達(民訴110①(3))により送達することになります。

「被告 金正恩様」東京地裁前の掲示が話題 北朝鮮に宛てた「公示送達」って何?(弁護士ドットコムニュース) - Yahoo!ニュース

Twitterに公示文書が掲載されているようなので、もしかすると将軍様が目にすることがあるかも?

さて、地方税法においては、送達について以下のとおり規定しています。

地方税法第20条第1項

地方団体の徴収金の賦課徴収又は還付に関する書類は、郵便若しくは信書便による送達又は交付送達により、その送達を受けるべき者の住所、居所、事務所又は事業所に送達する。ただし、納税管理人があるときは、地方団体の徴収金の賦課徴収(滞納処分を除く。)又は還付に関する書類については、その住所、居所、事務所又は事業所に送達する。

ちょっと分かりにくいのは、「賦課徴収に関する書類」であっても、条文上、「送達」の文言が使用されていないものが多いということです。

例えば、地方税法第13条は「文書により納付又は納入の告知をしなければならない」と規定していますし、督促状については「発しなければならない」(地66ほか)徴収猶予については「通知しなければならない」という用語を用いています。他方、国税徴収法においては、差押書(徴68①)、債権差押通知書(徴62①)、差押通知書(徴73①)、交付要求書(徴82①)などはいずれも「送達しなければならない」と規定しています。

民事訴訟法で「送達」の用語が用いられているのは期日の呼出状(民訴94①)のほか、訴状(民訴138)、訴えの変更申立書(民訴143③)、判決書(民訴255①)など、その後の訴訟手続に重大な影響を及ぼす書類に限定されているように読めますが、国税徴収法も概ね同様の趣旨なのではないかと考えます。そうなると、地方税法の規定ぶりだけがよく分からない…。

地方税法が「分かりにくい」理由が、この辺にもあるような気がします。