徴税吏員の逡巡

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ナッジは滞納整理を変えるか

自治体によって多少の差異はあるでしょうが、滞納が発生し、督促状が発付されると、まずは催告(文書・電話)が行われるのが一般的だと思います。

http://www.zeimukyodoka.jp/info/files/torikumi_030506.pdf

令和2年度における京都地方税機構の催告文書発付実績は、現年・滞繰含めて実に13万通以上。地方税法上は、「督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、財産を差し押えなければならない」(地方税法第331条など)と規定されてはいますが、実務上、全ての滞納事案を差し押さえることは不可能です。特に初期滞納対策においては、文書催告により案件を絞り込むことが重要です。

もちろん、漫然と同じような内容の文書を出しても効果など上がるはずはなく、各自治体において文面や用紙の色、封筒のデザインなどにも工夫を凝らしているところだと思いますが、昨今注目を集めているのが、「ナッジ」を活用した取組みです。

ナッジ(nudge)とは本来「ひじで軽く突く」という意味だそうですが、行動経済学の分野では、人々が「自発的に望ましい行動を選択するよう促す仕掛け」を示す用語として用いられているようです。

英国の税当局が2011年に行った実証実験では、無作為に抽出した住民を4つのグループに分け、各グループに対して以下の内容の文書を送付しました。

①「納期内に納付しましょう」

②「この国の人は、10人中9人が納期内に納付しています」

③「この郵便番号の地域の人は、10人中9人が納期内に納付しています」

④「あなたの町内の人は、10人中9人が納期内に納付しています」

結果は、①のグループの納期内納付率が67.5%であったのに対し、②グループは72.5%、③グループでは79%、④グループでは83%だったそうです。

https://www.sci-japan.or.jp/vc-files/member/secure/speakers/20201027.pdf

大きなコストもかけずに、納期内納付率が15%も向上するなら使わない手はないでしょうが、前掲の資料にも「ナッジの効果は、やり方や対象者によって大きく差が生じる」との記述がありますし、いかんせん、まだ事例の蓄積がないので即採用、ということにはならないかもしれません。

とはいえ、自治体独自の工夫にも限界があるでしょうし、「行動経済学に基づいて」という説明には説得力もありますので、近い将来、導入に向けた動きが出てくるような気もします。