徴税吏員の逡巡

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消費税の滞納は防げるか

国税の滞納残高が、22年ぶりに増加に転じた、とのニュースです。

税滞納22年ぶり増加 コロナ対応優先、督促減少 国税庁(時事通信) - Yahoo!ニュース

国税庁のHPにはもう少し詳細な資料が掲載されていますが、

https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0021007-113.pdf

やはり目につくのは総滞納額の4割弱を占める消費税です。

消費税の滞納については、古くから問題視されていて、平成10年度の決算検査報告において、会計検査院は、国税庁に対して以下のとおり指摘しています。

消費税は、製造、卸売、小売等の各段階の売上げに課税され、その税額が順次価格に上乗せされていくことにより最終的には消費者が負担することとなっている。そして、各段階の事業者は、売上げに係る消費税額から仕入れに係る消費税額を控除した額を納付することとなっている。このように、消費税は事業者を納税義務者としているが、最終的にはその負担は消費者に転嫁されることとなっている。こうした仕組みから、事業者が納付すべき消費税相当分の資金は消費者からの預り金的な性格を有するものである。

さらに、

ア 滞納に至った原因について

・・・事業者が滞納に至った原因を滞納整理に関する書類などにより調査したところ、・・・滞納するに至った背景には、次のようなことがあると認められた。

(1)事業者に消費税が消費者からの預り金的な性格を有する税であるという認識が希薄であること

(2)課税売上げに係る消費税相当分の資金と売上金とが資金的に明確に区分できないこと

(3)納付回数が年1回から4回であるため、納付すべき消費税相当分の資金を受け入れてから納付するまでの期間が長いこと

確かに納税者感情とすると、負担したはずの消費税がキチンと納付されていないとすれば、重大な問題と言えるでしょう。

一方で、消費税の課税対象及び納税義務者については、消費税法に以下のとおり規定されています。

消費税法第4条 

国内において事業者が行つた資産の譲渡等・・・には、この法律により、消費税を課する。

消費税法第5条

事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等・・・につき、この法律により、消費税を納める義務がある。

消費税の納税義務者は「事業者」であることは条文上明らかであり、「納税義務者は他にいて、自らは納付の義務のみを負う」という源泉徴収義務者や特別徴収義務者とは性質が異なります。

地方税における間接税には、地方消費税を別にすれば、入湯税、たばこ税、軽油引取税などがありますが、例えば入湯税であれば、

地方税法第701条

鉱泉浴場所在の市町村は、・・・鉱泉浴場における入湯に対し、入湯客に入湯税を課するものとする。

地方税法第701条の3

入湯税の徴収については、特別徴収の方法によらなければならない。

と規定されており、特別徴収義務者(浴場施設の経営者等)にとって、入湯税は納税義務者(入湯客)からの預り金であることが明示されています。

他方、消費税に関しては、事業者が納税義務者とされていますので、(法律的には)預り金とは言えません。この点につき、東京地判平成2年3月26日は、以下のとおり判示しています。

消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者に対する関係で負うものではない。

ただ、上記判例が平成2年、冒頭の会計検査院報告が平成10年度である点に鑑みれば、預り金的な性格を有する(端的に言えば、運転資金への流用は許されない)という点を周知徹底することは、滞納の解消のみならず、納税モラルの維持の観点からも必要なことであると考えます。

 

余談ですが、僕自身は、個人住民税の特別徴収分の滞納については、法の規定どおり、刑事罰をもって臨むべきであると考えていますし、催告文書にもその旨明記しています。

地方税法第324条第3項

第三百二十一条の五第一項若しくは第二項ただし書又は第三百二十一条の七の六(第三百二十一条の七の八第三項において読み替えて準用する場合を含む。)の規定により徴収して納入すべき個人の市町村民税に係る納入金の全部又は一部を納入しなかつた特別徴収義務者は、十年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。