徴税吏員の逡巡

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柔道整復師の療養費は差し押さえられるか

国民健康保険の場合、国民健康保険法第36条第1項の規定により、市町村または組合(保険者)が被保険者の疾病及び負傷に対して療養の給付を行うこととされています。

国民健康保険法第36条

市町村及び組合は、被保険者の疾病及び負傷に関しては、次の各号に掲げる療養の給付を行う。ただし、当該被保険者の属する世帯の世帯主又は組合員が当該被保険者に係る被保険者資格証明書の交付を受けている間は、この限りでない。

一 診察
二 薬剤又は治療材料の支給
三 処置、手術その他の治療
四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

同条第3項の規定により、被保険者は自己の選定する保険医療機関から資格の確認を受けて療養の給付を受けることとされており、療養の給付に関する費用は、同法第45条第1項の規定により、保険者が保険医療機関に支払うこととされています。

この場合、保険医療機関と被保険者の間には診療契約に基づく法律関係が生じますが、保険医療機関と保険者の間にも公法上の準委任契約による法律関係が生じるものと解されていますので、保険医療機関が租税を滞納している場合、保険者(支払いに関する事務を委託している場合は委託先(国保連や基金))を第三債務者として診療報酬を差し押さえることができます。

東京地判昭和58年12月16日

健保法上の保険医療機関の申請と指定は、国の機関としての知事が第三者である被保険者のために、被保険者に代わって療養の給付を医療機関に委託することを目的とした公法上の準委任契約の性質を有し、保険医療機関の診療報酬請求権は、委任事務報酬請求権の性質を有するものである。

他方、柔道整復師は保険医療機関ではありませんので、療養の給付には該当せず、診療報酬も発生しませんが、代わりに療養費が支給されます。

国民健康保険法第54条

市町村及び組合は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給(以下この項及び次項において「療養の給付等」という。)を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所若しくは薬局その他の者について診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、市町村又は組合がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。(以下略)

この場合、保険者(市町村及び組合)の支給決定によって被保険者が療養費の受給権を獲得することになりますので、療養費に係る債権債務の関係は保険者と被保険者の間で生じることとなります(施術者は債権者とはなりません)。

柔道整復療養費に関しては受領委任払が認められていますが、既往の判例においては「受領委任払は、柔道整復師が、被保険者から療養費の受領を委任され、当該被保険者への療養費の返還債務と当該被保険者に対する施術料債権とを対当額で相殺することにより施術料債権の支払を確保するもの」と判示されており(札幌地判平成28年1月13日)、施術者は自ら債権者の立場に立つわけではなく、療養費の受取りを代理するにとどまるものと解されます。

したがって、療養費については滞納処分の対象とはならないものと解されます。