徴税吏員の逡巡

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そして請求は却下される

国税不服審判所が、令和2年度における審査請求の概要を公表しました。

令和2年度における審査請求の概要 |審査請求の状況 | 国税不服審判所の概要等 | 国税不服審判所

○令和2年度の審査請求の処理件数は2,328件となっています。

○処理件数のうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数(認容件数)は233件(一部認容168件、全部認容65件)で、その割合は10.0%となっています。

総務省が実施している「行政不服審査法施行状況調査」によれば、(こちらは平成30年度の統計値ですが)地方公共団体における請求認容の割合は6.8%とされていますので、国税不服審判所による裁決の方が若干認容の割合が高くなっています。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000708344.pdf

内訳を見ると、徴収関係については処理件数151件に対して請求認容は6件(3.9%)。さらに興味深いのは、却下の件数が58件(38.4%)と、課税に係る審査請求の却下件数(35件、1.63%)を大幅に上回っている点です。

不服申立てがあった場合、地方税法第19条の7第1項ただし書の規定により、滞納処分による換価は裁決があるまでの間は行うことができません。

審査請求は、その目的となつた処分に係る地方団体の徴収金の賦課又は徴収の続行を妨げない。ただし、その地方団体の徴収金の徴収のために差し押さえた財産(国税徴収法第八十九条の二第四項に規定する特定参加差押不動産を含む。)の滞納処分(その例による処分を含む。次項において同じ。)による換価は、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるとき、又は審査請求をした者から別段の申出があるときを除き、その審査請求に対する裁決があるまで、することができない。

ただし、国税徴収法第89条第1項によれば、債権は換価が必要な財産からは除かれていますので、不服申立てがあった場合でも、債権の取立ては妨げられないものと解されます。

差押財産(金銭、債権及び第五十七条(有価証券に係る債権の取立て)の規定により債権の取立てをする有価証券を除く。)又は次条第四項に規定する特定参加差押不動産(以下この節において「差押財産等」という。)は、この節の定めるところにより換価しなければならない。

債権の差押えは、第三債務者に対する債権差押通知書の送達によって効力が発生し、当該債権を取り立てることによって効力を失うものと考えられています。したがって、取立て以降に審査請求を提起したとしても、請求の対象となる処分は既に効力を失っており、回復するべき法律上の利益が存在しないため、かかる審査請求は不適法と見做され、裁決によって却下されるのが一般的です。

また、配当処分に対する不服が申し立てられるケースもありますが、配当処分に係る審査請求期間は換価代金等の交付期日までと(地税19の4(4))極めて短期間とされているため、期間徒過による却下事例が多く見受けられます。また、仮に配当処分に係る審査請求が認容され、当該処分が取り消された場合であっても、処分庁は配当を受けた者から配当金の返還を受けたうえで再度適法な配当処分を行うのみであるとして、請求の利益がないと判断される事例もあるようです。

https://www.city.noda.chiba.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/022/711/saiketsu001_shicho.pdf

行政不服審査法は、「審査請求が不適法であって補正することができないことが明らか」な場合は、審理手続を経ずに却下の裁決を行うことができる旨を規定しています(行審24②)。上掲の野田市の事例においても、同項の規定を適用して請求を却下する旨明示されています。

債権、とりわけ一度の取立てで被差押債権が消滅することの多い預貯金の払戻請求書については、上記のとおり審査請求は「門前払い」されることが多く、審査請求制度が実効性を失っているとの指摘もあるようです。

審理員による審査手続は、裁決権を有する審査庁とは別の機関が審理を行うことにより、審理手続の公平性・中立性・客観性を確保することを目的としています。この導入趣旨に鑑みれば、請求の要件を充足しない場合であっても、審理員を指名して実体審理を経る、という取扱いも一考に値するのではないでしょうか。