徴税吏員の逡巡

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「裁定的関与」は見直されるか

沖縄県の玉城知事が、全国知事会のWEB会議で、国による「裁定的関与」について見直しを求めるよう要望しました。

国の自治体への「裁定的関与」見直しを 全国知事会で玉城知事(RBC琉球放送) - Yahoo!ニュース

都道府県知事が法定受託事務に係る処分を行った場合、当該処分についての審査請求は、当該事務を担当する大臣に対して行うこととされています(地自255の2①(1))。

法定受託事務に係る次の各号に掲げる処分及びその不作為についての審査請求は、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、当該各号に定める者に対してするものとする。(以下略)

一 都道府県知事その他の都道府県の執行機関の処分 当該処分に係る事務を規定する法律又はこれに基づく政令を所管する各大臣

処分(若しくは不作為)を行った行政庁とは別の組織の判断で、行政処分が取り消されるわけですから、地方自治体の自主性・自立性を軽んじているとの批判はあるでしょうし、処分の経緯や周辺事情については自治体職員の方が確知しているはずなのに、国が審査庁となることには違和感があります。法令解釈にかかる疑義に関しては、司法判断を仰げは良いわけですし。

裁定的関与の存続理由につき、松本逐条には以下の記述があります。

本条の規定は、法定受託事務の性質第一号法定受託事務にあつては国において、第二号法定受託事務にあつては都道府県において、それぞれのその適正な処理を特に確保する必要があるという性質)を踏まえつつ、私人の権利利益の救済を図ることを重視するとともに従来の取扱いとの継続性を確保することにも配意して、引き続き処分庁以外の行政庁に対し、「審査請求」を認めることとした

適正な処理を特に確保する必要があるから、国が関与しなければならない、という考え方が、「地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるよう(地自1の2(2))」なものなのか、疑問が残ります。

僕自身も、携わった処分を国の機関によって取り消された経験があります(身バレが怖いので詳細は伏せますが笑)。弁護士も交えて、国の裁決を不服とした取消訴訟を提起することも検討しましたが、それができないことを知って絶望しました。

この点について、最判昭和49年5月30日は以下のとおり判示しています。

国民健康保険事業の運営に関する法の建前と審査会による審査の性質から考えれば、
保険者のした保険給付等に関する処分の審査に関する限り、審査会と保険者とは、一般的な上級行政庁とその指揮監督に服する下級行政庁の場合と同様の関係に立ち右処分の適否については審査会の裁決に優越的効力が認められ、保険者はこれによつて拘束されるべきことが制度上予定されているものとみるべきであつて、その裁決により保険者の事業主体としての権利義務に影響が及ぶことを理由として保険者が右裁決を争うことは、法の認めていないところであるといわざるをえない。

 上記の「拘束されるべきことが制度上予定されている」という点に ついては、(諸説あるようですが)行政事件訴訟法第52条の規定を一つの根拠としていると考えて良いと思います。

裁決は、関係行政庁を拘束する。
2 申請に基づいてした処分が手続の違法若しくは不当を理由として裁決で取り消され、又は申請を却下し、若しくは棄却した処分が裁決で取り消された場合には、処分庁は、裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならない。
3 法令の規定により公示された処分が裁決で取り消され、又は変更された場合は、処分庁は、当該処分が取り消され、又は変更された旨を公示しなければならない。
4 法令の規定により処分の相手方以外の利害関係人に通知された処分が裁決で取り消され、又は変更された場合には、処分庁は、その通知を受けた者(審査請求人及び参加人を除く。)に、当該処分が取り消され、又は変更された旨を通知しなければならない。

 上記最高裁の判示と併せて考えれば、これらの規定は、「一般的な上級行政庁とその指揮監督に服する下級行政庁の場合と同様の関係」を前提としているものと思量されます 。機関委任事務制度下における包括的指揮監督権は第一次分権一括法により廃止されたわけですから、指揮監督権を前提とした裁定的関与(のみならず、国による裁決の拘束力までも)が存続している、というのも、理解し難い話ではあります。