徴税吏員の逡巡

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誰が責任を負うのか

群馬県伊勢崎市が、窓口で徴収した市税19万円を紛失したと発表しました。

市役所窓口で納められた税金紛失 財政部長が全額補填 伊勢崎|NHK 群馬県のニュース

5月10日の領収分といいますから、固定資産税等の納通発付直後 。窓口がバタバタしていたであろうことは想像に難くありませんが、当然言い訳にはなりません。
「納付された税金を集計したところ、19万円が足りないことに職員が気付き」ということなので、領収済通知書は手元にあって、現金のみがない、という状況であると推察します。事情を知る人間の犯行であれば、発見を遅らせるために済通も処分すると思いますので、事件性は低いと考えて良いのではないでしょうか。

気になるのは「管理・監督責任のある財政部長がみずから紛失した全額を補填した」という点です。

現金等の亡失があった場合の現金出納員及び現金分任出納員の賠償責任は、地方自治法第243条の2の2に規定されています。

会計管理者若しくは会計管理者の事務を補助する職員、資金前渡を 受けた職員、占有動産を保管している職員又は物品を使用している職員が故意又は重大な過失(現金については、故意又 は過失)により、その保管に係る現金、有価証券、物品(基金に属する動産を含む。)若しくは占有動産又はその使用 に係る物品を亡失し、又は損傷したときは、これによつて生じた損害を賠償しなければならない。(以下略)

現金については、重大な過失であることを要せず、単なる過失であっても職員に賠償責任がある旨を規定しています。
市の発表では「人為的な過誤によるものであり、納税者との現金の授受、レジへの入金、保管及び集計作業などの現金取扱い中に発生したものと思われます。」とされていますので、会計管理者の事務を補助する職員による過失が原因であると結論づけているわけです。

市税等収納金亡失事案の発生/伊勢崎市

そうなると、地方自治法 第243条の2の2第3項の規定に基づき、監査委員の判断を仰ぐべき事案であると考えます。

普通地方公共団体の長は、第一項の職員が同項に規定する行為により当該普通地方公共団体に損害を与えたと認めるときは、監査委員に対し、その事実があるかどうかを監査し、賠償責任の有無及び賠償額を決定することを求め、その決定に基づき、期限を定めて賠償を命じなければならない。

伊勢崎市の財務規則には、以下の規定が置かれていますので、(これは想像ですが)総務部長まで事故報告があがるまでに財務部長による補填は決定しており、「補填したのだから、実質的に市には損害が発生していない」という説明をしたのではないでしょうか。

伊勢崎市財務規則第285条

現金、有価証券、物品若しくは占有動産を保管する職員又は物品を 使用する職員は、当該保管又は使用に係る現金、有価証券、物品若しくは占有動産を亡失し、又は毀損したときは、 直ちに、その旨を事故届出書により所属主管部長等に届け出なければならない。
2 主管部長等は、前項の規定による事実を発見したとき又は法第24 3条の2の2第1項に規定する職員が法令の規定に違反して行為をしたこと若しくは怠ったことにより市に損害を与えたと 認められるときは、そのてん末を調査し、事故報告書を付して総務部長に提出するとともに、その旨 を会計管理者に通知しなければならない。

しかしながら、損害の有無、賠償責任の有無については、やはり監査委員において判断をするべきでしょう。
平成30年の鎌倉市の事例では、職員らが補填をしたうえで監査委員に監査を求め、監査委員から本件における賠償の責任はない、との判断をうけています。

本監査請求の対象職員12名は、いずれも現金出納員ないし現金分任出納員であり、これらは地方自治法第243条の2第1項に規定 される職員に該当する。しかし、対象職員 12 名からは損害を補填したい旨の申し出があり、市の損害は補填され たことが確認されている。
このことから、本監査請求における賠償の責任はないものと判断する。

https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kansa/documents/29baisho.pdf