徴税吏員の逡巡

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刺激を受けました

フォロワーさんが執筆された、行政財産と相隣関係に関する論文を拝読しました。

僕自身、かつては普通財産の管理業務や用地買収業務に従事していましたので、非常に興味深く読ませていただきました。

論文で検討されていた事案は、自治体が所有する都市計画道路の予定地であるとのことでしたが、これが一般の道路改良事業である場合はどうなるんだろう、と思ったので、甚だ僭越ですが、この視点から少し考えてみました。

 

一般に、自治体が公共事業の施行のために取得した用地については、行政財産として扱われます。

地方自治法第238条

4 行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。

道路改良事業の場合は、道路法の規定に基づいて道路認定(道路法第8条第1項)及び区域決定(同法第18条第1項)を行った上で用地の取得に着手しますから、自治体が土地の権原を取得する時点ではすでに「供することと決定」されています。すなわち取得した時点から行政財産として扱われることになると解されます。

道路法第8条 

第3条第4号の市町村道とは、市町村の区域内に存する道路で、市町村長がその路線を認定したものをいう。

第18条

・・・道路を管理する者・・・は、路線が指定され、又は路線の認定若しくは変更が公示された場合においては、遅滞なく、道路の区域を決定して、国土交通省令で定めるところにより、これを公示し、かつ、これを表示した図面を関係地方整備局若しくは北海道開発局又は関係都道府県若しくは市町村の事務所・・・において一般の縦覧に供しなければならない。道路の区域を変更した場合においても、同様とする。

本工事の施工がいつになるか分からない都市計画道路とは異なり、道路改良事業については、用地買収に着手する頃には、工事の見通しもある程度は立っているはずです。民法による相隣関係の規定を無制限に主張されると、事業の施行に支障が生じるおそれがあります。

そこで道路法には、行政財産に隣接する区域を指定し、当該区域内における一定の行為を制限することができる旨を定めた規定が置かれています。

道路法第44条 

道路管理者は、道路の構造に及ぼすべき損害を予防し、又は道路の交通に及ぼすべき危険を防止するため、道路に接続する区域を、条例(指定区間内の国道にあつては、政令)で定める基準に従い、沿道区域として指定することができる。但し、道路の各一側について幅二十メートルをこえる区域を沿道区域として指定することはできない。

上記規定は、道路の供用開始前における道路予定地域にも準用されますので(道路法第91条第2項)、道路認定・区域決定を経て道路用地を取得した後であれば、沿道区域を指定した上で道路に対する損害又は危険を防止するため必要な措置を講ずべきことを命ずることができます。その制限の範囲内においては、相隣関係の規定についても一定の制限を受けるものと考えることができます。

なお、札幌高判昭和54年5月31日は、河川法の規定による新水路敷地に係る囲繞地通行権に関して、

 然しながら他方河川法は、公共用物としての河川の適正な利用とその保全を河川管理者に命ずることによつて、河川本来の機能の維持とその発揮を期待しているのであるから、河川区域に成立する囲繞地通行権の内容は、右河川法の所期するところと両立しうるものに制限されるべきことも、また、当然であるということができる。

とし、さらに、

少くとも相当の重量物件を常時搬出入するために通行権が民法第210条の規定に基き河川区域に成立することは、かかる通行によつて河川区域内の土地の形状を変更させる虞がないとはいえないことを考慮すると(河川法第27条第1項参照)、これを消極に解さざるを得ない。

と判示して、トラックによる通行を含む囲繞地通行権を否定しています。

 

繰り返しになりますが、とても興味深く読ませていただきました。

執筆された抹茶氏(@matcha1255)に心から敬意を表します。ありがとうございました。