徴税吏員の逡巡

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苫小牧市は大丈夫か

JR苫小牧駅前にある閉鎖された旧商業施設をめぐり、土地の一部を所有する不動産会社が苫小牧市に損害賠償を求めた裁判で、2審の札幌高裁は1審に続き苫小牧市の訴えを退けました。

JR駅前の旧商業施設めぐる訴訟 2審も苫小牧市の訴え退ける|NHK 北海道のニュース

商業施設は2014年8月に閉鎖され、翌年10月に苫小牧市が建物の所有権を寄付により取得していますが、閉鎖に先立つ2014年2月に、原告の不動産会社が敷地の一部を購入していました。市は原告に対しても寄付を求めて協議をしたようですが、不調に終わり、占有していた期間分の賃借料を請求された、という事案のようです。

一審判決を見る限り、市側は「権利の濫用」を軸に主張を展開していたようですが、そもそも市が建物の所有権を取得する時点で、既に原告は敷地の所有権を取得していたわけですから、権利の濫用というのは、ちょっと苦しいと言わざるを得ません。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/301/089301_hanrei.pdf

ただし、

原告は,本件建物及び本件敷地の再開発を行おうとする者に対し,本件土地に対する補償を要求するなどの利益を受けることを企図して,本件土地を取得したものである。

という内容については、強ち無理な主張というわけでもないようで、高速道路の事業予定地に、補償金目的で過密に立木などを植栽した事案について、権利濫用の法理を適用し、損失の補償を不要とした収用委員会の裁決例があります。

https://www.union-r.co.jp/library/img/pdf/rep_h20-1.pdf

本件植栽行為は、公共事業の実施が明らかであるにもかかわらず、用地買収を承知のうえで敢えて意図的に「損失」を虚構するもので、公共事業を利用してもっぱら不当な立木補償を求める要素が強いものである。かかる行為は現行制度における事業認定前という損失補償制度の隙を狙って補償の増加を図ることを目的としていることが明らかであり、高速道路という公共施設の建設に阻害を与える行為であって、公共の福祉に反するとともに信義誠実の原則に反し、権利の濫用と言える。

今般のケースにしても、土地収用法の規定による事業の認定を経ていれば、問題なく土地の所有権を取得できたはずです(なんらかの事情はあるのでしょうが)。土地の所有権を取得する目途も立たない段階で、建物の寄付を受けてしまったことは、拙速との誹りを免れないように思われます。