徴税吏員の逡巡

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一部納付は承認に該当するか

最高裁で、複数の金銭消費貸借契約における充当先を指定しない一部弁済について、特段の事情のない限り、全部の債務を承認したとして消滅時効を中断する効力がある旨判示されました。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/896/089896_hanrei.pdf

「月刊税」2月号にも記事があるようですが(まだ僕のところまで回ってきません笑)、租税債務についても同様に解されるのかが気になるところです。

 

一部納付の取扱いについては、国税通則法基本通達第73条関係4に「納税者による国税の額の一部の納付は、その旨の意思表示が認められる限り、その国税の承認があったものとする」との規定があり、我らが教科書「地方税法総則逐条解説」にも同旨の記載があります。

既往の裁判例奈良地裁葛城支部平成14年5月7日判決)では以下のとおり判示されています。

税目・年度が多岐にわたる地方税を滞納している者が、そのうちの一部の税目・年度の地方税のみを納付した場合、当然には、その納付が他の滞納地方税の承認に当たるということはできないが、その納付が、その者の納付すべき滞納地方税の一部の納付であり、なお納付すべき滞納地方税の残額があることを承知している場合に限り、その一部納付にかかる地方公共団体の滞納地方税全部について承認があったものと認めるのが相当である

 

今般の最高裁判例

借主は、自らが契約当事者となっている数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在することを認識しているのが通常であり、弁済の際にその弁済を充当すべき債務を指定することができるのであって、借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく弁済をすることは、特段の事情のない限り、上記各元本債務の全てについて、その存在を知っている旨を表示するものと解される

と判示していることと比較すると、原則的取扱いが逆になっているように読めます。

そもそも普通徴収による租税債権債務は、法定の要件に該当する事実がある者を納税義務者として、課税権者が一方的に租税債権の内容を具体的に確定させることによって発生しますので、当事者間の契約によって成立する民事債権とは、その成立につき根本的な構造が異なっています。最高裁の判断を、ストレートに租税債権にも適用できるかは、疑義が残るところと考えます。

なお、国税不服審判所の裁決例では

仮に、請求人代表者が滞納国税の一部について納付意思を否認するといった言動をした場合、面談時の滞納者の言動として原処分関係資料にはその旨の記載がされるはずであるが、当該資料にはかかる記載はなく、そうすると、上記の答述も、信用性の高い原処分関係資料の記載と符合するものとして、高い信用性が認められる

徴収職員の職責からすれば、通常、滞納国税の一部を除外して納付相談を受けることは考えがたいから、請求人代表者に滞納金目録を交付し、当該時点の滞納国税の一部を除外して納付相談をしたことはない旨の上記の答述も、内容は自然であり、高い信用性が認められるものである。

との判断が示されています。徴税吏員としての責任、基本的な事項の重要性を痛感します。