徴税吏員の逡巡

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投資信託は差押えの対象となるか

投資信託受益権の差押えについては、国税徴収法第 73 条の2に以下のとおり規定されています。

振替社債等の差押えは、振替社債等の発行者・・・及び滞納者がその口座の開設を受けている社債、株式等の振替に関する法律第二条第五項(定義)に規定する振替機関等・・・に対する差押通知書の送達により行う。

ここに言う「振替社債等」とは、「社債、株式等の振替に関する法律第2条第1項(定義)に規定する社債等のうちその権利の帰属が振替口座簿の記載又は記録により定まるものとされるもの」と規定されており(徴73)、振替法第2条第1項第8号に「投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託又は外国投資信託の受益権」が明記されています。

「受益権」という用語は、信託法第2条第7項において、「信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(受益債権)」と「受託者その他の者に一定の行為を求めることができる権利」の総体と定義されているのですが、問題になってくるのはその意義と差押えの効力が及ぶ範囲です。

国税徴収法第73条の文理上、「振替社債等」は無体財産権として差し押さえるものと解されますので、同じく無体財産権である信用金庫の持分の意義について判示した東京地判昭和44年5月29日が参考になると思われます。

・・・持分には二つの意義がある。その第一は会員が会員たる資格において金庫に対して有する権利義務の総称またはこれらの権利義務発生の基礎たる法律関係、すなわち剰余金配当請求権残余財産分配請求権などのような自益権と、議決権、業務執行権、代表権のような共益権を包含する会員権とも称すべきものを意味するものであり、その第二は金庫が解散するか、または会員が脱退した場合に会員がその資格において金庫に対し請求し、または金庫が支払うべき観念上あるいは計算上の数額を意味するものである。信用金庫の持分は財産権としての性格を有するから、これらに対する差押換価は民事執行法625条に従って肯定されるべきである。尤も、右差押換価は持分を一個の財産権として、持分にふくまれる身分的な権利には及ばず、従って 差押えがあっても差押債務者たる会員は議決権を行使し、または役員として業務を執行し、金庫を代表することができることは勿論である。

すなわち、受益権のうち、自益権(剰余金配当請求権残余財産分配請求権等)及び脱退した場合の解約金支払請求権については、差押の効力が及ぶものと解されます。

 

このうち、脱退による解約金の支払請求権については、最判平成18年12月14日により

投資信託の受益者と販売会社との間の権利義務を定める投資信託総合取引規定において、受益証券等の解約の申込みは販売会社の店舗で受け付けること、解約金は販売会社の店舗にある受益者の指定預金口座に入金することを定めており、信託約款においても、受益者による解約実行請求は委託者又は販売会社に対して行うものとされている場合には、受益者から解約実行請求を受けた販売会社は、これを委託者に通知し、一部解約を実行した委託者から一部解約金の交付を受けたときに受益者に一部解約金を支払う義務を負う。

受益者の一部解約金支払請求権を差し押さえた債権者は、取立権の行使として、販売会社に対して解約実行請求の意思表示をすることができ、委託者によって信託契約の一部解約が実行されて販売会社が一部解約金の交付を受けたときは、販売会社から同請求権を取り立てることができる。

との判断が示されたことで、投資家(滞納者)を債務者、販売会社を第三債務者、投資信託に係る解約金請求権を差押債権とする方法が定着したものと思われます。

しかしながら、剰余金の配当請求権等に関しては、依然として第三債務者及び取立ての方法等について明確になっているとは言えず、実務においては対応に窮する場面もあるのが実情です。