徴税吏員の逡巡

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なぜ謝るのか

静岡県の川勝知事が、行政代執行により所有物件を撤去された元地権者に対し、行政代執行を陳謝したらしいです。

沼津鉄道高架、行政代執行 川勝知事が元地権者訪ね「おわび」|静岡新聞アットエス

沼津市のケースは、収用委員会による権利取得裁決及び明渡裁決がなされており、既に明渡の期限は徒過していますので、土地収用法第102条の2第2項の適用を受けます。

・・・土地若しくは物件を引き渡し、又は物件を移転すべき者がその義務を履行しないとき、。・・・は、都道府県知事は、起業者の請求により、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。

事業の起業者は静岡県(と沼津市)なので、知事の請求に基づいて、知事が代執行したことについて、知事が陳謝する、という、冗談のような事態が起こっているわけです。

さらに報道によれば、

知事は元地権者について「最後まで節を曲げず、真にご立派だった」とし「沼津市の発展に向けた歴史の一ページに残るとお伝えした」と述べた。

とありますが、これが法律の定める手続によって課された義務を履行しない者に対してかける言葉でしょうか。なにかの間違いであることを祈るばかりです。

当の(元)地権者にも見透かされているとおり、ただのパフォーマンスなのでしょうが、あまりにも考えが浅すぎます。

あ、この「代執行お詫び」の記事と「川勝知事、4期目出馬明言せず」の記事を並べた静岡新聞は、センスがいいと思いますね。

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行政法の教科書には、行政上の強制執行は、

①行政代執行

②強制徴収

③直接強制

④執行罰

の4 つの基本類型に分類されるとされています。強制徴収を日常業務とする我々徴税吏員に置き換えてみれば、上記のケースは、財産を差し押さえた滞納者のところに、首長が謝罪に行くようなものです。こんなことが、許されるはずがありません。

この事業を推進するために日夜業務に取り組んでいる、静岡県交通基盤整備部、土木事務所及び収用委員会事務局等の職員の心中は、察するに余りあります。

関係諸氏におかれましては、どうかモチベーションを保っていただき、粛々と事業を進めていただければと思います。