徴税吏員の逡巡

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相続登記の義務化は進むのか

法制審議会が、相続や住所・氏名を変更した時に土地の登記を義務付ける法改正案を答申しました。

土地登記の相続3年内に 法制審答申、違反なら過料: 日本経済新聞

相続から3年以内に申請しなければ10万円以下の過料を科す。

とのことですが、過料制度で登記手続の義務化が進むのか、疑問が残るところではあります。

 

不動産の権利に関する登記については、(契約の相手方との間では義務とされることはあるでしょうが)公法上の義務とはされていません。これは、権利に関する登記が、 不動産に係る権利変動について第三者対抗要件を具備するためにされるものであり(民法第 177 条)、私的自治の原則に従って、必要に応じてその登記を申請すればよいからであると解されています。
他方、表示に関する登記については、現行の不動産登記法にも過料に関する規定が置かれています。

不動産登記法第164条

 36条、第37条第1項若しくは第2項、第42条、第47条第1項(第49条第2項において準用する場合を含む。)、第49条第1項、第3項若しくは第4項、第51条第1項から第4項まで、第57条又は第58条第6項若しくは第7項の規定による申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する。

土地・建物の表題登記及び滅失登記、土地の地目・地積更正登記などは、現行法においても、登記懈怠があれば過料に処することとされていますが、この過料については、実際には適用された事例がほとんどないことは、実務家であれば周知の事実です。

相続登記を過料をもって義務化するのであれば、法定期限内に登記手続を行わない場合、現実に過料を科すという運用が必要ですが、その前提として、登記官が登記義務の懈怠の事実をどのようにして把握するのか、という課題があります。

また、現行制度上は、法定相続分をもって権利を承継した相続人の場合には、登記を経由しなくても、第三者に対抗することができることとされています。

最判昭和38年2月22日

相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人中の乙ならびに乙から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者丙に対し、他の共同相続人甲は自己の持分を登記なくして対抗しうるものと解すべきである。

法定相続分による相続に関しては、手間暇をかけてまで登記をするメリットもないように思われます。

 

相続に関する手続は、不動産登記だけでなく、戸籍・住民登録、金融機関における手続、税関係、保険関係、果ては携帯電話の解約まで非常に多岐に亘り、かつ、それぞれの機関において、それぞれのルールに基づいた対応を求められます。

ワンストップ的な観点から、これらの機関に対する提出書類を一元化することができれば、相続人の負担軽減にもなりますし、ひいては相続登記に係るハードルも下がる気がするのですが…