徴税吏員の逡巡

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自動車の差押えと占有

三重県では、11月と12月の2か月間を「差押強化月間」として徴収強化に取り組んでいるとのことですが、今年度の成果として、12月末時点における収入未済額が、10月末時点から約3,500万円縮減したと発表しています。

https://www.pref.mie.lg.jp/TOPICS/m0008300058.htm

滞納処分の状況として

差押強化月間中(11月、12月)に、預貯金・給与・自動車等の差押処分を664件執行するなど徴収強化に取り組みました。
また、差押自動車に対して、タイヤロックを20件、搬出を1件実施しました。

とのことですが、参考として滞納処分の内訳が記載されており、

【差押強化月間中の差押件数】
令和2年度   664件(△445件)
(預貯金 173件、給与・年金等 221件、自動車 236件、他 34件)
令和元年度 1,109件
(預貯金 330件、給与・年金等 341件、自動車 394件、他 44件)

ということで、処分件数自体は、前年度と比較すると大幅に減少しています。
預貯金については特に減少幅が大きく、やはり一昨年の大阪高裁判決が影響しているものと推察されます。

 

興味深いのは、自動車差押件数236件に対して、タイヤロック20件、搬出1件という部分です。

自動車の差押手続は、国税徴収法上、不動産の差押えに関する規定を準用することとされていますので(徴71①)、差押えの効力発生要件は、滞納者に対する差押書の送達若しくは差押えの登録のいずれか早い方となります。
また、タイヤロックについては、徴収職員が自動車を占有したうえで滞納者等に当該自動車を保管させる場合における「自動車の運行・・・をさせないための適当な措置」(徴71⑤後段)であり、滞納者等の申立てにより運行の許可をする場合を除いては、この措置を「講じなければならない」とされています。
そうなると、タイヤロック(運行禁止措置)も搬出もされない215件の差押自動車については、「滞納者・・・の申立てにより、その運行・・・を許可」したのでしょうか。

もう一つの可能性としては、保管命令にしても運行禁止措置にしても、徴収職員の占有が前提になっていますので、「自動車登録のみ差し押さえ、占有はしていない」という立場をとっているのかもしれません。

ここで問題になってくるのは、占有について規定している国税徴収法第71条第3項の解釈です。

国税徴収法第71条

3 税務署長は、自動車、建設機械又は小型船舶を差し押さえた場合には、滞納者に対し、これらの引き渡しを命じ、徴収職員にこれらの占有をさせることができる。

「できる」規定なので、一見すると、差し押さえた自動車を占有するか否かについては、税務署長(首長)の裁量である、とも読めますが、自動車については「本来動産性が強く、その交換価値の減耗度合も大きいので、その点を考慮して、徴収職員がこれらの占有を奪うことができることとしたのである」(国税徴収法精解)との考えに立つのであれば、権限を付与する趣旨での「できる」であるような気もします。

 

また、自動車の換価は徴収職員が占有した後に行うとの規定(徴91)や、競売開始決定が発せられた日から1か月が経過しても執行官が自動車を取り上げることができないときは、手続が取り消されるという民事執行上の取扱い(民事執行規則97条,民事執行法120条)に鑑みても、占有をせずに登録のみ差し押さえる、というのは、違和感があります。