徴税吏員の逡巡

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二重差押えに取立権はないのか

延滞金が嵩んでしまった債権差押案件は、徴税吏員を悩ませる問題の一つと言えるのではないでしょうか。

たとえば、滞納額Aについて滞納者の給与支払請求権を差し押さえ、当該差押以降に発生した滞納額Bについて二重差押えを行った場合、現行制度上は、滞納額Aに係る延滞金まで満足できない限り、取り立てた額を滞納額Bの本税額に充当することはできません。

 

この点について、月刊「税」2015年6月号に、「地方税徴収問題研究会」編の記事があります。
ポイントとされている点は以下のとおりです。

同一の租税債権者が、複数の租税債権に基づいて、債権の差押えと当該債権の二重差押えを行った場合、第三債務者から交付を受けた金銭(差押債権受入金)は、両差押えの対象となった複数の租税債権の範囲内において、裁量により、充当先を決定することができると解する余地があります。

二重差押えの場合の差押債権受入金の取扱いについては、以下のとおり書かれています。

国税徴収法第129条によれば、差押債権受入金は、「差押えに係る租税に配当する」こととされている。また、同条第2項が「交付要求により交付を受けた金銭は、交付要求に係る国税に充てる」と規定していることに鑑みれば、配当後の充当先についても、差押えに係る国税に充てることが予定されていると解される。

国税徴収法基本通達第62条関係7によれば、債権の二重差押えを行う場合は、原則として債権の全部について二重差押えを行うこととされている。ただし、先順位の差押えがある間は二重差押えに基づいて取立をすることはできない。

・したがって、国税徴収の文言上は、冒頭の租税債権Bについても「差押えに係る租税」である以上、充当対象とすることができないとも言い切れないように思われる。

結論とすると、

差押え及び二重差押えが同一市長によって行われたような場合には、取立権の主体及び手続が異なることを理由とした調整の必要はないのであるから、租税債権Aによる差押えと租税債権Bによる差押えの両方を根拠として同時に取立権を行使し、両者ともに「差押えに係る租税」として充当の対象とすることができるという考え方も、十分成り立つように思われる」

としています。

本誌では判例等も引用されてはいますが、いささか牽強付会な印象はありますし、差押先着手の規定と整合していないようにも思われます。同一の執行機関であれば、調整の必要がない、というのも、根拠がよく分かりません。

 

確かに、滞納額Aの延滞金が多額に及ぶ場合などは、長期にわたって取立額を延滞金にのみ充当することになりますし、未済額は減らない、徴収率は上がらない、取立ては長引くで、(徴税吏員も滞納者も)お互いに良いことはありません。地方税法第14条の5の規定に照らしても、疑問が残るところではあります。

それでも、現行制度上は、先行差押えを解除する他ないような気がします。