徴税吏員の逡巡

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【滞納整理の現場から】その1 滞納処分と相続

職場で実際にあった事例について、(備忘のために)書き残しておこうと思います。

※もちろん詳細は伏せますが、ガチで検討した事例なので、万一、弊社の関係者に発見されたら即刻削除します笑。

 

第1回は、滞納者の財産について滞納処分を執行した後、滞納者が死亡した場合の取扱いについてです。

国税徴収法の規定から見てみましょう。

国税徴収法第139条第1項

滞納者の財産について滞納処分を執行した後、滞納者が死亡し、又は滞納者である法人が合併により消滅したときは、その財産につき滞納処分を続行することができる。

相続が発生した場合、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継しますから(民896)、差押済みの財産については、いわば「差押え」という負担を伴った状態で相続することになります。したがって、滞納者死亡後においても、当該財産についての滞納処分は続行することができる、と規定されています。なお、「続行することができる」については、基本通達に以下のとおり明示されています。

国税徴収法基本通達第139条関係1

法第139条第1項の「滞納処分を続行することができる」とは、被相続人又は被合併法人を名宛人として執行した滞納処分の効力が、別段の手続をとることなく、当然に相続人又は合併法人に及ぶことをいう。
なお、滞納処分による換価に伴う買受人への権利移転に当たっては、税務署長は、買受人に代わって相続人又は合併法人への権利移転の登記の嘱託をした後、買受人のために権利移転の登記の嘱託をするものとする(昭和43.6.5付民事甲第1835号法務省民事局長回答)。

さて、今回検討したケースの概略は以下のとおりです。

固定資産を所有している滞納者Aが土地を賃借していることが判明したため、賃借人Bを第三債務者として地代の差押えを執行。取立てを継続していたところ、Aが死亡したことが判明。相続調査を行った結果、相続人がいないことが分かった。次回の取立てはどうすればよいか。

問題となったのは国税徴収法第139条第1項の規定は相続人不存在の場合にも適用されるのか、という点です。
相続人が存在しないわけですから、相続財産は法人となります(民 951)。ウチで差し押さえているのは地代の支払い請求権ですが、相続財産法人は当該請求権の帰属主体となり得るのか、あるいは、相続財産法人は単に法律上の擬制であって、権利を行使する法定代理人(相続財産管理人)が選任されないうちは財産の帰属主体とはなり得ないのか、という点ですね。

この点について、東京地方裁判所平成7年4月26日は以下のとおり判示しています。

相続財産管理人は相続財産法人の法定代理人であって、相続財産の帰属主体となるものではなく、債権者が相続財産に属する権利を代位行使する場合には、債権者は相続財産管理人に代位してその権利を行使するのではなく 、相続財産に属する権利を代位行使するものであるから、右権利行使のためには相続財産法人が存在していれば足り、相続財産管理人の選任までは必要としないと言うべきである。

差押えによる取立ては取立権(徴67)に基づいて行われますから 、代位行使が認められる以上、取立てが行えないとする理屈はないように思われます。

ただ、国税徴収法による差押えの場合は、手続上、配当計算書を送付する必要があります(徴131)。

税務署長は、第百二十九条(配当の原則)の規定により配当しようとするときは、政令で定めるところにより、配当を受ける債権、前条第二項の規定により税務署長が確認した金額その他必要な事項を記載した配当計算書を作成し、換価財産の買受代金の納付の日から三日以内に、次に掲げる者に対する交付のため、その謄本を発送しなければならない。

一 債権現在額申立書を提出した者
二 前条第二項後段の規定により金額を確認した債権を有する者
三 滞納者

上記規定に鑑みれば、取立てから3日以内には滞納者に対して配当計算書を発送すべきところですが、本件については滞納者は相続財産法人と解され、送達の相手方とはならないことから、配当処分を有効に行うためには相続財産管理人の選任が必要であるとの結論に至り、取立ては保留することとなりました。

 

徴税吏員の不正は防げるのか

とんでもない徴税吏員がいたものです。

北見市の元職員の男が、滞納者の口座から金をだまし取っていたとして逮捕されました。

元北見市職員の男が差し押さえた税滞納者の金を詐取容疑で逮捕 市長らは謝罪会見~北海道(HBCニュース) - Yahoo!ニュース

北見市納税課の元職員、浜田拓弥容疑者は、今年5月までの2か月間、うその書類を金融機関に送って税金の滞納者4人の口座のあわせて67万円を差し押さえて徴収し、自分の口座に入金した疑いで26日逮捕されました。

滞納者の口座から徴収した、とのことなので、単純に考えれば滞納額を超えて取り立てた、ということになると思われますが、これ自体は違法な行為ではありません。

国税徴収法基本通達第63条関係1

徴収職員は、債権を差し押さえるときは、その債権の額が徴収すべき国税の額を超える場合においても、2の場合を除き、その債権の全額を差し押さえなければならない(法第63条本文)。

滞納額が10万円、預金残高が15万円の場合、原則としては15万円全額を取り立て、滞納税に10万円、滞納者に5万円を配当する、という趣旨です。が、実務上は、国税徴収法基本通達第63条関係2に基づき、預貯金に関しては一部取立てを行っているのが一般的です。

国税徴収法基本通達第63条関係2

法第63条ただし書の「その全額を差し押える必要がないと認めるとき」とは、次に掲げる要件を満たすときをいうものとする。

(1) 第三債務者の資力が十分で、履行が確実と認められること。

(2) 弁済期日が明確であること。

(3) 差し押さえる債権が、国税に優先する質権等の目的となっておらず、また、その支払につき抗弁事由がないこと。

北見市が通常の差押えにおいては一部取立てを行っていたのだとすると、ルールを無視した取立てを発見できなかったのか、という意見が出てきそうですが、現行法上、取立てに係るチェック体制については(ほぼ)考えられていないと言って良いのが実状です。差押えは差押調書の作成が義務付けられていますし(徴54)、配当計算書については前述のとおりですが、取立てに関しては「取立調書」のようなものは定められているわけではありません。したがって、特に金融機関に臨場して即時取り立てるようなケースでは、吏員がその気になれば、所属内で不正行為を発見できる可能性は低いと言わざるを得ません(詳しくは書きませんが)。

取立てについては緊急を要する場合もありますので、その場でのチェックは困難でしょうが、その後の処分である配当計算書の作成過程において不正は防げたはずではないか、とも考えられます。この点について、北見市の事務専決規程を見てみると、「差押えの決定」は課長専決事項とされているようですが、配当計算書の作成については記載がないようです。

北見市事務専決規程

ここで国税徴収法の規定をみると、差押え(第47条)も取立て(第67条)も「徴収職員(徴税吏員)」が行うこととされていますが、配当計算書の作成に関しては「税務署長(地方団体の長)」が行うこととされていますので(131条)、専決事項とされていない以上、市長決裁ということになります。ただ、差押えの起案は課長専決、配当計算書の作成のみ市長決裁というのは想定しづらいので、疑問が残るところではあります。

配当は、差押えの一環として流れ作業的に行われる場面もあるようですが、それ自体が独立した行政処分であり、審査請求及び抗告訴訟の対象となるものです。決裁区分を明確にすることは、不測の事態に備えるだけでなく、配当処分についての職員の意識を高めるためにも、必要なのではないでしょうか。

スマホアプリ納付の根拠

国税庁が、いわゆるスマホアプリ納付の導入時期を2022年12月に延期することを発表しました。

国税納付、スマホアプリ決済導入延期。22年1月→12月 - Impress Watch

僕の新採当時は、納付方法は「銀行に行く」か「役所に行く」の二択でした(口振もありましたけどね)。現在では非効率な訪問徴収も、当時は多少意味合いが違っていたように記憶しています。

歴史を紐解いてみると、平成15年度の税制改正により地方自治法施行令が改正され、「私人に対する収納委託」が制度化されたことにより、コンビニ納付が可能になりました。

地方自治法施行令第158条の2第1項

普通地方公共団体の歳入のうち、地方税・・・については、前条第一項に規定する場合に限り、その収納の事務を適切かつ確実に遂行するに足りる経理的及び技術的な基礎を有する者として当該普通地方公共団体の規則で定める基準を満たしている者にその収納の事務を委託することができる。

総務省が公表している「地方税の滞納残高の推移」によれば、バブル崩壊を契機として急増していた滞納残高は、平成15年を境に現象に転じ、税源移譲によって個人住民税の滞納が急増するまでの間、減少傾向が続きました。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000601511.pdf

この間の減少に関しては、各自治体の徴収努力に依るところが大きいことと思いますが、コンビニ納付の拡充も一定の貢献をしたものと考えます。

一方、クレジット納付に関しては、コンビニのように単に収納するのではなく、利用者の依頼に基づいてクレジット会社が「代理納付」する形態となります。これが「指定代理納付者制度」として制度化されたのは平成18年度の税制改正。根拠は地方自治法第231条の2第6項になります。

地方自治法第231条の2第6項

普通地方公共団体は、納入義務者が、歳入の納付に関する事務を適切かつ確実に遂行することができる者として政令で定める者のうち当該普通地方公共団体の長が指定をした者・・・が交付し又は付与する政令で定める証票その他の物又は番号、記号その他の符号を提示し又は通知して、当該指定代理納付者に当該納入義務者の歳入を納付させることを申し出た場合には、これを承認することができる。

記事で触れられている令和3年度の税制改正により創設された制度が、「指定納付受託者制度」です。新たな制度では、コンビニ納付については、従来の収納のみの委託とは異なり、「歳入等の納付の通知に係る書面であってバーコードの記載があるものを提示することにより、指定納付受託者に納付を委託する」と位置付けられています。また、「クレジットカードの番号及び有効期限その他当該クレジットカードを使用する方法による決済に関し必要な事項」若しくは「電子情報処理組織を使用して番号、記号その他の符号を通知する方法による決済(スマホアプリによる決済)に関し必要な事項」を指定代理納付者に通知することにより納付を委託することができることとされました。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000749188.pdf

この改正によって、コンビニ納付、クレジット納付及びスマホ決済の根拠法令が統一化されることになりますので、「私人に対する収納委託」及び「指定代理納付制度」については、可能な限り早期に「指定納付受託者制度」に移行することが求められています。

納付チャネルの拡充は徴収率の向上にも寄与するものと考えられますので、徴税吏員としても歓迎するところですね。

差押えによる取立てと自主納付

差し押さえた債権の取立てと前後して、今まで音沙汰のなかった滞納者が急に自主納付する、ということがあります。「なんで今さら」と思わなくもないのですが、まあ、自主納付が原則ですからね。はい。

国税徴収法に基づく滞納処分は、(対象財産が債権の場合は)「差押え」「取立て」「配当」の各処分から成ります。滞納者による自主納付(完納)が取立て前にされたのであれば、差押えを解除することになります。

国税徴収法第79条第1項

徴収職員は、次の各号のいずれかに該当するときは、差押えを解除しなければならない。

 一 納付、充当、更正の取消その他の理由により差押えに係る国税の全額が消滅したとき。

また、債権に関しては取立ての時点で納付とみなされますので(徴67③)、

国税徴収法第67条第3項

徴収職員が第一項の規定により金銭を取り立てたときは、その限度において、滞納者から差押に係る国税を徴収したものとみなす。

取立て後に自主納付がされた場合、当該自主納付は誤納として扱われるものと解されます。よって、地方税法第17条の規定により、遅滞なく還付する必要があります。

地方税法第17条

地方団体の長は、過誤納に係る地方団体の徴収金(以下本章において「過誤納金」という。)があるときは、政令で定めるところにより、遅滞なく還付しなければならない。

問題になるのは、「自主納付により完納となっていたものの、処理が間に合わずに取り立ててしまった」場合でしょう。

完納(租税債権の消滅)は差押えの解除要件ですが(徴79①)、差押えの解除は滞納者(若しくは第三債務者)に通知することによって行うとされています(徴80①)。

国税徴収法第80条第1項

差押の解除は、その旨を滞納者に通知することによつて行う。ただし、債権及び第三債務者等のある無体財産権等の差押の解除は、その旨を第三債務者等に通知することによつて行う。

(相手方がある場合の)行政処分の効力発生時期については、最判昭和29年8月24日は以下のとおり判示しています。

・・・行政庁の処分 については、特別の規定のない限り、意思表示の一般的法理に従い、その意思表示が相手方に到達した時と解するのが相当である。即ち、辞令書の交付その他公の通知によって、相手方が現実にこれを了知し、または相手方の了知し得べき状態におかれた時と解すべきである。

当然、解除事由の発生から解除の効力発生までタイムラグが生じることとなりますが、債権の取立権は、「差し押さえた債権」についてのみ成立しますから(徴67①)、解除の効力発生後に行われた取立ては、その前提を欠く無効なものと考えられます。したがってこの場合は、当該金銭を第三債務者に返却すべきものと考えます。

取立てが解除の効力発生前であれば、取立て自体は有効と解されますが、配当計算書作成時において確認できる租税債権の額は0になっていますから、一旦取り立てて歳計外現金として受け入れ、全額を滞納者に配当することになるでしょう。

 

 

相続人の代表者と納付責任

「相続人の代表者」というのも、名前が良くないと思うんですがねえ・・・。

地方税法第9条の2第1項

納税者又は特別徴収義務者・・・につき相続があつた場合において 、その相続人が二人以上あるときは、これらの相続人は、そのうちから被相続人の地方団体の徴収金の賦課徴収(滞納処分を除く。)及び還付に関する書類を受領する代表者を指定することができる。

同条の見出しは(相続人からの徴収手続)とされていますが、地方税法総則逐条解説にも記載されているとおり、その実体は相続人に対する書類の送達の特例について規定しているものです。

この特例の対象となる「賦課徴収(滞納処分を除く)及び還付に関する書類」とは、「納税の告知に関する書類、更正又は決定に関する書類、督促状その他地方税法等の規定により通知すべき書類及び過誤納金の還付又は充当に関する書類等」とされています(上記逐条解説)。

これらの書類が相続人の代表者に送達された場合には、その書類に係る処分は、その指定に係る全ての相続人に対して効力を生じることとされています。したがって、単純な承継の事例であれば、督促までは代表者に送達することで足りるものと考えられます。

なお、同条による「指定」については、指定する相続人と指定される相続人(=代表者)との間の合意を前提とするものであり、単に「書類を受領する」行為は法律行為ではありませんから、代表者とその他の相続人の関係は、準委任(民656)に該当するものと解されます。準委任には民法第10節の規定が適用されますので、代表者は、受け取った書類等を他の相続人(委任者)に引き渡す義務を負います(民646)。したがって、(法の規定から考えれば)各相続人は実際に書類を受け取っている「はず」です。

民法第646条第1項
受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の 物を委任者に引き渡さなければならない。
その収取した果実についても、同様とする。

民法第656条
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

納税義務の承継事案であれば、各相続人は民法の規定による相続分に基づいて按分した額についてのみ、納付義務を負うこととなります。
ただし、相続人のうち、相続によって承継税額を超える積極財産を取得していた者については、地方税法第9条第3項の規定により、その超える額を限度として他の相続人の承継税額についても納付責任を負うこととされていますから、積極財産の相続が明らかであれば、他の相続人の承継分についても納付責任を追及できる可能性はあります。

地方税法第9条第3項

前項の場合において、相続人のうちに相続によつて得た財産の価額が同項の規定により納付し、又は納入すべき地方団体の徴収金の額をこえている者があるときは、その相続人は、そのこえる価額を限度として、他の相続人が同項の規定により納付し、又は納入すべき地方団体の徴収金を納付し、又は納入する責に任ずる。

 

催告による時効の完成猶予

地方税の徴収権は、5年間行使しないときは、時効により消滅します。

地方税法第18条
地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利は、法定納期限の翌日から起算して五年間行使しないことによって、時効により消滅する。

この徴収権の時効に係る障害事由については、地方税法第18条の2に規定(告知、督促及び交付要求)があるほか、同法第18条第3項の規定により、民法の規定が準用されます。

令和2年4月1日施行の改正民法により、時効の完成が妨げられるという(改正前の『時効の停止』と同様の)効力を時効の「完成猶予」、新たな時効が進行を始めるという(改正前の『時効の中断』と同等の)効力を時効の「更新」という表現を用いて再構成されましたが、経験豊富な吏員諸氏ほど、戸惑いが抜けないのではないかと拝察します。

この時効障害事由のうち、催告については、改正前後においてやや規定ぶりが異なっています。

改正前民法第153条

催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

改正民法第150条

1 催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は 、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

改正前においては、催告から6箇月以内に差押え等の処分をしなければ、時効の中断の効力を生じないとされていましたから、文理上は催告自体に時効中断効があるようにも読めます。しかしながら、改正前においても、時効を中断するためには一定期間内に裁判上の請求や差押え等の手続きを別途行う必要であり、催告には一時的に時効の完成を阻止する効力しかないことを意味しており、改正前後で趣旨は変わっていないものと解されます。

また、改正民法第150条第2項は新設された条文ですが、改正前においても判例法理により、催告で延長した時効期間をさらに次の催告で延長する、ということは認められていませんでしたので(大判大正8年6月30日)、この取扱いについても変更はありません。

なお、完成猶予の効力を生ずるためには、催告文書が相手方に到達することが必要であると解され、東京地判平成10年12月25日も以下のとおり判示しています。

そして、催告は、債務者に対して履行を請求する債権者の意思の通知であるから、これが債務者に到達して初めてその効力を生ずるというべきである。

廃止された道路は…?

群馬県みどり市で、市有地が太陽光発電施設の一部にされた、とのニュースです。

市有地が太陽光発電施設の敷地の一部に… 盛り土されソーラーパネル設置 市側「業者と話し合う」|社会・話題|上毛新聞ニュース

市建設課によると、2013年に業者側から市に「残土を入れたい」と申し入れがあった。当時、道路東端は擁壁が道をふさぐように築かれ、路面は崩れた土で埋まっていたため、市は近隣土地所有者の了解を得ることを条件に了承。この際、利用契約書などの書面は交わさなかった。

詳細は不明ですが、申し入れがあった当時、当該道路は東端を擁壁で塞がれ、路面は土で埋まっていた、というのですから、既に機能を失っていた、と考えてよさそうです。

登記簿によれば、地目は公衆用道路、所有者は(旧)大間々町、とのことですが、一般に自治体が公共事業の施行のために土地を取得した場合、当該土地は行政財産として扱われます。

地方自治法第238条

4 行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。

本件土地は公衆用道路ですから、道路法の規定による道路認定(道路法第8条第1項)及び区域決定(同法第18条第1項)を行っているものと考えられます。すなわち取得した時点では行政財産であったと考えて良いでしょう。

道路法第8条 

第3条第4号の市町村道とは、市町村の区域内に存する道路で、市町村長がその路線を認定したものをいう。

第18条

・・・道路を管理する者・・・は、路線が指定され、又は路線の認定若しくは変更が公示された場合においては、遅滞なく、道路の区域を決定して、国土交通省令で定めるところにより、これを公示し、かつ、これを表示した図面を関係地方整備局若しくは北海道開発局又は関係都道府県若しくは市町村の事務所・・・において一般の縦覧に供しなければならない。道路の区域を変更した場合においても、同様とする。

その後、なんらかの事情で道路の機能は無くなってしまった、とのことのようですが、この点につき道路法第18条第2項は以下のとおり規定しています。

道路管理者は、道路の供用を開始し、又は廃止しようとする場合においては、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公示し、かつ、これを表示した図面を道路管理者の事務所において一般の縦覧に供しなければならない。

道路としての供用を廃止すれば、当該財産については普通財産となり、貸付けや売払いの対象となります(自治238の5)。しかしながら道路として供用されていた土地に関しては、不要となった敷地であっても一定期間(市町村道の場合は2ヶ月)は道路管理者が管理しなければなりません。

道路法第92条

道路の供用の廃止又は道路の区域の変更があつた場合においては、当該道路を構成していた不用となつた敷地、支壁その他の物件(以下「不用物件」という。)は、従前当該道路を管理していた者が一年をこえない範囲内において政令で定める期間、管理しなければならない。

道路法施行令第37条

法第九十二条第一項(法第九十一条第二項において準用する場合を含む。)の政令で定める期間は、国道又は都道府県道を構成していた不用物件については四月とし、市町村道を構成していた不用物件については二月とする。

記事によれば、「利用契約書などの書面は交わさなかった」とのことですが、この「公衆用道路」が道路法による道路であれば私権を行使することはできませんし(道路4)、供用廃止済みであれば賃貸借契約若しくは売買契約を締結するべきであると考えられます。なお、機能を失った道路については、速やかに廃止をするべきである旨、国交省企画専門官からの事務連絡が発出されています。

https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/teianbosyu/doc/tb_h30fu_15mlit_159.pdf

管理期間として規定されている2ヶ月を待たずに業者に使用を認めることが前提だった、というのは邪推でしょうが、案外根の深い問題なのかもしれません。