徴税吏員の逡巡

そして絆。

仏像等の差押えは可能か

名古屋国税局が、差し押さえた仏像など30点の公売を実施するようです。

阿弥陀如来に馬頭観音も… 差し押さえの仏像が公売に:朝日新聞デジタル

吏員各位はご存知でしょうが、国税徴収法第75条第1項第7号の規定により、「仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物」は、差押えが禁止されています。

一方で、国税徴収法基本通達第75条関係16には、「仏像、仏壇等であっても礼拝の対象としないで商品、骨とう品等となっているものには、法第 75 条第 1 項第 7 号の規定の適用がな」いとされていますから、このケースにおける仏像等は、礼拝の対象ではないと判断したものと思われます。報道によれば、公売対象とされる仏像等については、「破産手続きが開始された老舗の仏壇製造販売会社」から差し押さえたもののようなので、「商品」に該当すると考えてよさそうです。

 

また、上記通達後段には「寺院の本堂、庫裡、神社の拝殿、社務所等は、礼拝に直接必要と認められないから、同号の規定の適用がない」との規定されています。

寺院の本堂や神社の拝殿は礼拝に必要なのではないかとも思われますが、この点については国税不服審判所平成21年11月10日裁決に、以下の判断が示されています。

礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物とは、仏像、位牌、神体、仏具、神具等で現に信仰又は礼拝の対象となっているもの及びこれに必要なものと解されるところ、寺院の本堂、庫裏、神社の拝殿、社務所等は、礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物とは認められないから、徴収法第75条第1項第7号に規定する「その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物」には当たらないと解される。

信仰の対象となっているのはあくまで仏像や御神体そのものであって、これらを安置する建物等についてまで差押禁止の効力は及ばない、という考えのようです。

そうなると、寺院の本堂を差し押さえ、公売するとした場合に、中の仏像をどうするのかが問題になるケースもあると思われます。

民事執行手続においては、民事執行法第168条第5項に以下の規定が置かれています。

執行官は、第一項の強制執行においては、その目的物でない動産を取り除いて、債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。この場合において、その動産をこれらの者に引き渡すことができないときは、執行官は、最高裁判所規則で定めるところにより、これを売却することができる。

国税徴収法には同旨の規定は見当たらないので、物件明細書等に「建物内に公売対象外の残置動産がある」との記載をするほかないのでしょうか…。

 

議員の滞納と情報公開

兵庫県明石市議が、国民健康保険料を滞納し、3月3日付で同市から議員報酬の差押えを受けていたことが判明しました。

明石市議、国保料滞納で報酬差し押さえ|明石|神戸新聞NEXT

長いことこの仕事をしていると、議員報酬の差押えなどたいして珍しくもな・・・(以下自粛)。

 

地方議会議員の滞納を巡っては、これまでもしばしば報道等で取り上げられてきました。
印象的だったのは、熊本県菊池市議が市税を滞納していた問題で、現職議員のうち2名について、過去に市税の滞納があったという事案なのですが、市側の対応にも問題があったとして調査特別委員会が設置されました。
調査の結果、市長をはじめとした幹部職員が中心となって、議員報酬の滞納処分を見送らせるなど、「特別扱い」をしていた実態が浮き彫りになりました。

https://www.city.kikuchi.lg.jp/dl?q=26842_filelib_6c206077ed962909d8746accce409fc4.pdf

このようなケースを踏まえてなのか、議員の納税状況を公開する条例を制定する自治体も増えてきているようです。
江南市議会などは、ホームページ上に一覧表形式で公表しており、一目瞭然です。

議員の納税状況|江南市公式ホームページ

 

さて、明石市のケースですが、少し気になっていたのは、市議の滞納情報の出所だったのですが、上記神戸新聞の記事で情報公開請求によるものであることが判明しました。
記事によれば、

氏名や金額は黒塗りで公開されなかった。

ものの、

差し押さえ財産について「21年3月以降の議員報酬、賞与、期末手当」などとあり、報酬を支払う債務者が明石市長であることから明石市議と判明した。

とされていますので、差押財産及び第三債務者の情報については、非公開情報に該当しないものと判断したようです。

明石市の情報公開条例第11条第6項において、「実施機関又は国等が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるもの」を非公開情報と規定しています。

明石市情報公開条例

他の自治体の事例をネットで探してみましたが、差押債権及び第三債務者の情報については、この「事務事業の遂行」を理由として、非開示としているケースが多いようです。

情報公開審査会(新規諮問 第929号)|東京都

https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/285498.pdf


明石市のケースは、事務事業の遂行は理由になり得ませんから(第三債務者が市長自身ですからね)、開示を決定した判断は妥当であると考えます。

 

上記菊池市の調査特別委員会の報告にもありますが、

市議会議員は、予算審議において徴収率および滞納額をチェックする立場にあり、さらに報酬を市民の税金から支給されていることを考えると、納税についても市民の手本となるべきであり、いかなる理由があろうとも市税滞納は許される行為ではない

ということに尽きると思います。

 

 

 

新たに徴税吏員となる方へ その2

僕自身も「徴税吏員」として首長からの委任を受け、「徴税吏員証」を携行して業務に当たっていますが、さて、徴税吏員とはどのようなものなのでしょうか。

徴税吏員の定義は、地方税法第1条第1項に規定されています。

3 徴税吏員 都道府県知事若しくはその委任を受けた都道府県職員又は市町村長若しくはその委任を受けた市町村職員

首長と、その委任を受けた職員が同列で徴税吏員として規定され、税法上様々な権限が与えられているわけですが、中でも重要なのが「滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る租税を完納しないとき」は、滞納者の財産を「差し押さえなければならない」としている(地税68①他)「自力執行権」です。

自力執行権は、債務不履行があった場合に、債権者自らが強制手段によって履行の効果を実現させるための権限ですが、私法取引においては、債権者による自力執行は原則として禁止されています。

私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によつたのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許されるものと解することを妨げない。
最判昭和40年12月7日)

租税債権の場合は、その徴収が大量性・反復性を有し、徴収のために煩雑な手続を要求することは困難であること及び債権としての特殊性(法律に根拠を求めるが故に、債務者の事情や債務の内容を、債権者が選択することができない)を考慮して、徴税吏員に自力執行権が与えられています。

 

地方税法においては、「徴税吏員」に対して様々な権限が付与されていると書きましたが、この権限の中には、地方団体の長において行うべきものと、個々の職員が自らの資格において単独で行って差し支えないものがあります。

地方税法の文言上は、必ずしもそのような区分が明確にはなっておらず、各自治体の条例において、徴税吏員の職務権限が規定されているところが実態であると思います。

自力執行権即ち滞納者の財産を差し押さえる権限については、決裁権者の決裁を受けることとされているのが一般的かと思いますが、例えば預金調査のために金融機関に臨場し、口座に預金を発見した場合などは、決裁を待たず、徴税吏員の判断で即時差押えを行っている自治体も多いと思います。
差押えは先着手、つまりは早い者勝ちなので、機動的対応をすることが重要ですが、同時に自らの判断で滞納者の財産を差し押さえることができる、という権限の重さを、常に認識する必要があると思います。

生命保険の解約は慎重に?

徴収実務において、生命保険契約上の債権の中で最も取立件数が多いのは、解約返戻金の支払請求権であろうと思います。

解約返戻金の支払請求権を差し押さえた場合に、民事執行法第155条の定める取立権に基づいて解約権を行使することの是非については、従来下級審における判決は分かれていました。

生命保険契約のうち専ら保険金受取人の生活保障あるいは社会保障の補完を目的とするものなどにあっては、その継続・解約の意思決定に債権者が干渉することは許されないと解すべきであるが、他方、生命保険契約の中でも主として貯蓄や時には利殖を主たる目的とするような契約にあっては、その解約を通常の財産権と別異に扱う理由はないと解される
(二分説:大阪地判平成5年7月16日)

債権者が生命保険契約解約前の解約返戻金支払請求権を差し押さえてこれにつき取立権を取得したときは、この解約返戻金支払請求権を具体化して取り立てるために、保険契約者の有する解約権を行使して、保険契約を解約することができるものと解するのが相当である。
(肯定説:東京地判平成10年8月26日)

この点につき最判平成11年9月9日は

生命保険契約は債務者の生活保障手段としての機能を有しており、その解約により債務者が高度障害保険金請求権又は入院給付金請求権等を失うなどの不利益を被ることがあるとしても、そのゆえに民事執行法一五三条により差押命令が取り消され、あるいは解約権の行使が権利の濫用となる場合は格別、差押禁止財産として法定されていない生命保険契約の解約返戻金請求権につき預貯金債権等と異なる取扱いをして取立ての対象から除外すべき理由は認められない

との判断を示し、この問題については肯定説を採用することで決着しました。

ただし、本判決には以下のとおり反対意見が付されました。

例えば、被保険者が末期的症状にある病に冒されているため、近々保険事故の発生により多額の保険金請求権が発生することが予測される場合や、被保険者が現実に特約に基づく入院給付金の給付を受けている場合などに、突如第三者の手によって保険契約が解約されてしまった事態を想定してみると、利益衡量的観点からみても、差押債権者による解約権の行使は、著しくその目的を逸脱したものといわざるを得ない。

(おそらく)これを受けて、徴基通67条関係6において、以下のような事情がある場合は、解約権の行使により著しい不均衡が生じないように慎重に判断することとされました。

(1) 近々保険事故の発生により多額の保険金請求権が発生することが予測される場合

(2) 被保険者が現実に特約に基づく入院給付金の給付を受けており、当該金員が療養生活費に充てられている場合

(3) 老齢又は既病歴を有する等の理由により、他の生命保険契約に新規に加入することが困難である場合

(4) 差押えに係る滞納税額と比較して解約返戻金の額が著しく少額である場合

 

実務上の取扱いとしては、滞納者に対して「生命保険解約予告書」等により通知を行うことで、滞納者に最後の納付機会を与えるとともに、介入権制度についても案内している自治体が多いのではないでしょうか。

 

新たに徴税吏員となる方へ

自治体、内示が出始める頃でしょうか。

4月から徴税吏員証を手にすることとなり、「滞納整理」という得体の知れない業務に恐々としている方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、新たに徴税吏員となる皆様に歓迎と激励の意を込めて、(こんなヒッソリと運営してるブログではありますが)滞納整理業務について僕が考えていることを綴ってみたいと思います。


日本国憲法は、その第30条において「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と規定し、同時に第84条において、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と定めています。
すなわち、「法律の根拠に基づくことなしには、国家は租税を賦課・徴収することはできず、国民は租税の納付を要求されることはない」(金子宏『租税法』より引用)ということであり、この原則(租税法律主義)は、国家・国民双方に向けた憲法法理として認識されています。

また、憲法第14条第1項は「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めています。租税法関係においては、「税負担は国民の間に担税力に即して公平に配分されなければならず、各種の租税法律関係において国民は平等に取り扱われなければならない」(金子宏『租税法』より引用)ということであり、この原則(租税公平主義)は租税法律主義と並んで租税法の基本原則とされています。

 

この両原則に照らせば、租税を滞納するということは、法律によって定められた負担を履行していない状態であり、憲法が定める平等原則にも反していると言うことができます。
そのような状態を適法に解消することを目指す私たち徴税吏員の業務は、最高法規たる憲法の要請にも則したものであり、広く全ての納税者から付託されていると考えるべきです。

税を滞納されている方の中には、諸般の事情からやむなく納期内に納税ができなかったものの、少しでも早く納付しようと懸命に努力をされる方もいらっしゃいます。しかしながら一方で、十分な経済力を持ちながら、身勝手な理屈を振りかざしたり、平然と約束を破ったり、犬にでもバレるような嘘をついたりする方がいらっしゃるのも事実です。そういう方々のために仕事をしていると考えてしまうと、この仕事はどうしようもなく理不尽なものになってしまいます。

とても重要なことなので繰り返しますが、我々徴税吏員の業務は、広くすべての納税者からの付託に基づくものと考えるべきであって、ごく一部の義務不履行者のために行うものではありません。

もう一つ、徴税吏員に課された重大な使命が税財源の確保です。
言うまでもないことですが、地方税は、地方公共団体が存立するための財政的な裏付けであり、地方税の徴収は、地方の財政力を確保するうえで極めて重要なものです。
他方、上記のとおり租税は法律上の根拠にしたがって公平・平等に課税されます。このことは裏を返せば、法律の定める要件を満たせば(債務者の事情に関わらず)課税が為されるということであり、私債権と比較すると、不履行となる確率は高まるという特性があります。
それゆえ、地方税法において、私債権に対する優先効力や、執行のための強制力等、強い権力が与えられています。
地方税が、地方公共団体の一般税源として行政の活動全般を支えているものであり、住民生活の維持発展を担保する基礎的な収入である点から見ても、その適法な確保は、広く全ての納税者から付託されていると考えるべきです。

税金が滞納となったときは、ペナルティとして延滞金があり、強制的に徴収する仕組みである「滞納整理」がある。
その滞納整理を司る我々徴税吏員の存在があるから、住民は「税金は期限内に納めるべきもの」「税は公平なもの」という意識を持ち続けることができるのです。
その意味では、徴税吏員は「納税秩序を維持する最後の砦」であると言うことができるのではないでしょうか。

一部納付は承認に該当するか

最高裁で、複数の金銭消費貸借契約における充当先を指定しない一部弁済について、特段の事情のない限り、全部の債務を承認したとして消滅時効を中断する効力がある旨判示されました。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/896/089896_hanrei.pdf

「月刊税」2月号にも記事があるようですが(まだ僕のところまで回ってきません笑)、租税債務についても同様に解されるのかが気になるところです。

 

一部納付の取扱いについては、国税通則法基本通達第73条関係4に「納税者による国税の額の一部の納付は、その旨の意思表示が認められる限り、その国税の承認があったものとする」との規定があり、我らが教科書「地方税法総則逐条解説」にも同旨の記載があります。

既往の裁判例奈良地裁葛城支部平成14年5月7日判決)では以下のとおり判示されています。

税目・年度が多岐にわたる地方税を滞納している者が、そのうちの一部の税目・年度の地方税のみを納付した場合、当然には、その納付が他の滞納地方税の承認に当たるということはできないが、その納付が、その者の納付すべき滞納地方税の一部の納付であり、なお納付すべき滞納地方税の残額があることを承知している場合に限り、その一部納付にかかる地方公共団体の滞納地方税全部について承認があったものと認めるのが相当である

 

今般の最高裁判例

借主は、自らが契約当事者となっている数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在することを認識しているのが通常であり、弁済の際にその弁済を充当すべき債務を指定することができるのであって、借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく弁済をすることは、特段の事情のない限り、上記各元本債務の全てについて、その存在を知っている旨を表示するものと解される

と判示していることと比較すると、原則的取扱いが逆になっているように読めます。

そもそも普通徴収による租税債権債務は、法定の要件に該当する事実がある者を納税義務者として、課税権者が一方的に租税債権の内容を具体的に確定させることによって発生しますので、当事者間の契約によって成立する民事債権とは、その成立につき根本的な構造が異なっています。最高裁の判断を、ストレートに租税債権にも適用できるかは、疑義が残るところと考えます。

なお、国税不服審判所の裁決例では

仮に、請求人代表者が滞納国税の一部について納付意思を否認するといった言動をした場合、面談時の滞納者の言動として原処分関係資料にはその旨の記載がされるはずであるが、当該資料にはかかる記載はなく、そうすると、上記の答述も、信用性の高い原処分関係資料の記載と符合するものとして、高い信用性が認められる

徴収職員の職責からすれば、通常、滞納国税の一部を除外して納付相談を受けることは考えがたいから、請求人代表者に滞納金目録を交付し、当該時点の滞納国税の一部を除外して納付相談をしたことはない旨の上記の答述も、内容は自然であり、高い信用性が認められるものである。

との判断が示されています。徴税吏員としての責任、基本的な事項の重要性を痛感します。

 

投資信託は差押えの対象となるか

投資信託受益権の差押えについては、国税徴収法第 73 条の2に以下のとおり規定されています。

振替社債等の差押えは、振替社債等の発行者・・・及び滞納者がその口座の開設を受けている社債、株式等の振替に関する法律第二条第五項(定義)に規定する振替機関等・・・に対する差押通知書の送達により行う。

ここに言う「振替社債等」とは、「社債、株式等の振替に関する法律第2条第1項(定義)に規定する社債等のうちその権利の帰属が振替口座簿の記載又は記録により定まるものとされるもの」と規定されており(徴73)、振替法第2条第1項第8号に「投資信託及び投資法人に関する法律に規定する投資信託又は外国投資信託の受益権」が明記されています。

「受益権」という用語は、信託法第2条第7項において、「信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(受益債権)」と「受託者その他の者に一定の行為を求めることができる権利」の総体と定義されているのですが、問題になってくるのはその意義と差押えの効力が及ぶ範囲です。

国税徴収法第73条の文理上、「振替社債等」は無体財産権として差し押さえるものと解されますので、同じく無体財産権である信用金庫の持分の意義について判示した東京地判昭和44年5月29日が参考になると思われます。

・・・持分には二つの意義がある。その第一は会員が会員たる資格において金庫に対して有する権利義務の総称またはこれらの権利義務発生の基礎たる法律関係、すなわち剰余金配当請求権残余財産分配請求権などのような自益権と、議決権、業務執行権、代表権のような共益権を包含する会員権とも称すべきものを意味するものであり、その第二は金庫が解散するか、または会員が脱退した場合に会員がその資格において金庫に対し請求し、または金庫が支払うべき観念上あるいは計算上の数額を意味するものである。信用金庫の持分は財産権としての性格を有するから、これらに対する差押換価は民事執行法625条に従って肯定されるべきである。尤も、右差押換価は持分を一個の財産権として、持分にふくまれる身分的な権利には及ばず、従って 差押えがあっても差押債務者たる会員は議決権を行使し、または役員として業務を執行し、金庫を代表することができることは勿論である。

すなわち、受益権のうち、自益権(剰余金配当請求権残余財産分配請求権等)及び脱退した場合の解約金支払請求権については、差押の効力が及ぶものと解されます。

 

このうち、脱退による解約金の支払請求権については、最判平成18年12月14日により

投資信託の受益者と販売会社との間の権利義務を定める投資信託総合取引規定において、受益証券等の解約の申込みは販売会社の店舗で受け付けること、解約金は販売会社の店舗にある受益者の指定預金口座に入金することを定めており、信託約款においても、受益者による解約実行請求は委託者又は販売会社に対して行うものとされている場合には、受益者から解約実行請求を受けた販売会社は、これを委託者に通知し、一部解約を実行した委託者から一部解約金の交付を受けたときに受益者に一部解約金を支払う義務を負う。

受益者の一部解約金支払請求権を差し押さえた債権者は、取立権の行使として、販売会社に対して解約実行請求の意思表示をすることができ、委託者によって信託契約の一部解約が実行されて販売会社が一部解約金の交付を受けたときは、販売会社から同請求権を取り立てることができる。

との判断が示されたことで、投資家(滞納者)を債務者、販売会社を第三債務者、投資信託に係る解約金請求権を差押債権とする方法が定着したものと思われます。

しかしながら、剰余金の配当請求権等に関しては、依然として第三債務者及び取立ての方法等について明確になっているとは言えず、実務においては対応に窮する場面もあるのが実情です。